久留米成田山(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です |
まずは「スマホ証券」から見ていこう。
【日経の記事】
まず「スマホ証券」を名乗るワンタップバイ(東京・港)に向かった。スマートフォン(スマホ)での株式売買に特化したネット証券だ。オフィス内はカジュアルな装いの若い社員が多く、ITベンチャーの雰囲気だ。
さっそくダミーの口座で株式の取引を体験してみる。アプリの画面にまず出てくるのは売買可能な銘柄リストだ。アップルやアマゾン・ドット・コム、マイクロソフトなど有名企業が並ぶ。現在の米国株30銘柄とETFに加え、今夏からは日本株も取り扱う予定だ。
今回はアップル株を選択して1タップ。次に金額を指定し2タップ。ワンタップバイが仕入れた株式を「小分け」にして販売するため、最低1000円から投資できる。購入時の株価や為替レートが表示されて最終確認し、「買う」を選択して3タップ。あっという間に取引は完了。一般のネット証券だと、16~18の操作手順が必要という。
「初心者を呼び込むために、(操作の簡単さなど)投資を始めるハードルをいかに下げるかにこだわった」と林和人社長は言う。実際、顧客の7割は20~30代の投資初心者なのだそうだ。
日本証券業協会の調査では個人投資家の過半は60歳以上。個人金融資産の保有も高齢層に偏っている。フィンテックはそんな問題の処方箋になるかもしれない。
◎単なるネット証券では?
「スマートフォン(スマホ)での株式売買に特化したネット証券」で「操作手順」を簡素化しただけの話だろう。ネット証券もフィンテックと言えばそうかもしれないが、目新しさはない。そこに多少の工夫を加えただけの会社を「フィンテック」の名の下に「金融の最先端」として紹介するのは頂けない。
「16~18の操作手順」を「3タップ」に簡素化しただけで「個人金融資産の保有も高齢層に偏っている。フィンテックはそんな問題の処方箋になるかもしれない」と言うのは、かなり大げさだ。
話を「ロボアド」に移そう。
【日経の記事】
次は「ロボアド」だ。いくつかの質問に答えるとコンピューターが個々人に最適な資産運用を指南してくれる。今回はウェルスナビ(東京・千代田)で体験した。
質問は年齢や投資目的、株価急落時の対応など6つだけ。そこから投資期間やリスク許容度を見極め、最適な運用戦略をはじき出す。
記者も試しにやってみたところ、20歳代で投資期間を長くとれることもあり、リスク許容度は5段階中もっとも高い5だった。推奨されたのは株式の比率が高めの運用戦略で、米国株に35%、日本・欧州株に32%、新興国株に13%投資する。
実際に口座開設して入金すればあとは「自動で長期の分散投資ができるのが強み」(柴山和久社長)だ。内外の株式や債券を組み入れる上場投資信託(ETF)を活用し、ポートフォリオを構築してくれる。
世界のロボアドによる運用残高は2017年時点で2248億ドル(25兆円)で、20年までに3倍超になるとの推計もある。日本でも投資初心者を中心に広がっていきそうな予感がした。
◎コストには触れずに…
「ロボアド」のくだりで気になるのはコストに触れていない点だ。調べてみると、年間の手数料は預かり資産の1%(税別、預かり資産3000万円まで)。ポートフォリオにETFを組み込んだ場合、ETFの信託報酬も上乗せされてくるはずだ。手数料はかなり高いと思える。
大分マリーンパレス水族館「うみたまご」(大分市) ※写真と本文は無関係です |
そこに触れずに「自動で長期の分散投資ができるのが強み」と会社側にアピールだけさせて「日本でも投資初心者を中心に広がっていきそうな予感がした」と締められると、筆者の野村優子記者が業界の回し者に思えてくる。
「ウェルスナビ」のロボアドは診断自体は無料のようなので、試してみるのはまだいいかもしれない。それを参考にするとしても、ポートフォリオは自分で組み合わせた方がいい。ETFならば個人で買うのもそれほど難しくない。もちろん多少は手間がかかるが、税別で年間1%の手数料を何年も払い続けるのはあまりに無駄だ。投資額1000万円ならば手数料は年間10万円にもなる。
知識の乏しい投資初心者が記事に釣られてロボアドに引き込まれないよう祈りたい。
※今回取り上げた記事「体験フィンテック~スマホ証券、3タップ→株取引完了 ロボアド、6問回答→運用を指南」
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170530&ng=DGKKASGD28H08_Z20C17A5EE9000
※記事の評価はD(問題あり)。野村優子記者への評価も暫定でDとする。
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