大分城址公園(大分市) ※写真と本文は無関係です |
【ダイヤモンドの記事】
会見ではトランプ氏が自ら質問者を指名した。政治とメディアの癒着ぶりを批判していただけに、透明性を印象付けようとしたのである。
実は、トランプ氏はテレビ画面の外で手を挙げていた記者を一切無視しており、前方に座っていた「番記者」しか指名していない。
しかも、前方席は予約制。座席にはメディア名が書いてあり、どの席に誰が座るか最初から分かっている。
◎透明性を印象付けられる?
「トランプ氏が自ら質問者を指名」すると「透明性を印象付け」られるだろうか。記事でも触れているように、「自ら質問者を指名」する場合は嫌な質問者を排除できる。「自ら指名するのは不透明さの表れだ」とは思わないが、透明性を印象付ける効果はほとんどなさそうだ。
この記事では説明に整合性の問題も感じた。
【ダイヤモンドの記事(写真に付けた説明)】
トランプ大統領にとって、メディアは宣伝広告の手段にすぎない
【ダイヤモンドの記事(本文)】
「恥と屈辱を味わうべき」。最近、スティーブン・バノン首席戦略官が米メディアをこう批判した。新政権はホワイトハウスの会見室撤去を検討したこともある。会見の演出術やトランプ氏による一方的なツイッター発信などを見る限り、新政権はマスコミを「不要」とみているようだ。
◎メディアは「不要」? それとも「使える」?
写真に付けた説明を見ると、メディアは「宣伝広告の手段」として利用価値がありそうだ。しかし、本文には「新政権はマスコミを『不要』とみているようだ」と書いてある。「宣伝広告の手段」として使えるのならば「不要」とは考えにくい。強引な弁明はできそうな気もするが…。
ディナン(ベルギー)の周辺 ※写真と本文は無関係です |
記事の結論部分も引っかかった。
【ダイヤモンドの記事】
1月下旬、コロンビア大学ジャーナリズムスクールでは、租税回避地データの「パナマ文書」を暴露したことで知られる国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)幹部ら調査報道の専門家が集まり、新政権に対する報道強化をぶち上げていた。
米大手紙「ニューヨーク・タイムズ」も担当チームを増強するという。トランプ新政権とメディアの対立は開戦前夜である。
◎「トランプ新政権とメディア」はまだ戦ってない?
松浦編集委員は「トランプ新政権とメディアの対立は開戦前夜である」と記事を締めている。つまり「トランプ新政権とメディアはまだ戦っていない」との判断だ。個人的には、既に戦っているように見える。もちろん、何を以って「開戦」とするかは主観的な問題ではある。ただ、「開戦前夜」とするならば「何を以って開戦とするか」が読者に伝わるように書いてほしかった。
ついでに、無駄な外来語使用について触れておきたい。松浦編集委員の記事から事例を2つ出す。
【ダイヤモンドの記事】
1月11日、昨年11月の米大統領選挙後初となったドナルド・トランプ大統領の記者会見に出席した。日本でも生放送された注目の会見だったが、前日まで案内状が届かず、狭い会場には会見2時間前から定員オーバーの数百人が押しかけた。
準備不足だな──。広報のロジスティックスの拙さに首をかしげたが、筆者の懸念は全くの杞憂だった。
【ダイヤモンドの記事】
自身の納税申告書を開示していないことを聞かれると、「私は選挙に勝った。誰が気にしているのか」と一蹴。ビジネスと大統領業務の「利益相反」という複雑な事案は、弁護士に代理答弁させた。見事なディフェンス術である。
◎無駄な横文字
上記のくだりで「ロジスティックス」「ディフェンス」を使う意義は乏しい。分かりやすくなるわけでもないし、文字数は増える。
「ディフェンス術」は例えば「防衛術」としても何の問題もない。「ロジスティックス」もわざわざ使う必要性はない。例えば「準備不足だな──。広報のロジスティックスの拙さに首をかしげたが、筆者の懸念は全くの杞憂だった」という部分を「広報の準備不足だと最初は感じたが、全くの杞憂だった」と直しても、伝わる情報はほぼ同じだ。「懸念は杞憂」には若干の重複感があったが、それも解消している。
記事は文学作品ではない。無駄な言葉(特に外来語)は省いて、簡潔に文章を仕上げてほしい。
※記事の評価はD(問題あり)。松浦肇編集委員への評価はC(平均的)を据え置くが、弱含みとする。松浦編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。
「金融危機から6年」? 産経の松浦肇編集委員へ質問(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_80.html
「金融危機から6年」? 産経の松浦肇編集委員へ質問(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_8.html
何のためのパリ取材? 産経 松浦肇編集委員への注文(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/11/blog-post_30.html
何のためのパリ取材? 産経 松浦肇編集委員への注文(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/11/blog-post_96.html
「再収監率40ポイント低下」? 産経 松浦肇編集委員の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/01/40.html
ジャンク債は値下がり? 産経 松浦肇編集委員の記事を解読
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/02/blog-post_25.html
産経 松浦肇編集委員だから書ける「World Scope」を評価
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/12/world-scope.html
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