2017年2月14日火曜日

「トランプ氏に物申せるのは安倍氏だけ」? 日経 秋田浩之氏の誤解

最近の日本経済新聞では「コメンテーター」という肩書をよく見かける。編集委員の一部にこの肩書を与えているようだ(どういう違いがあるのかは分からない)。秋田浩之氏もそんなコメンテーターの1人だ。その秋田氏が14日の朝刊1面に書いた「日米首脳会談の宿題 『価値』も語れる同盟に」という記事に引っかかる記述があった。
大分城址公園(大分市) ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

外国人の入国制限策などをかかげるトランプ政権は、世界から「人権軽視」との批判を浴びる。この点を記者会見で聞かれた安倍氏は「ノーコメント」で通した

(中略)むろん、自由や人権をトランプ氏に説いても、聞き入れられず、逆効果になる恐れもある。それでも英国が欧州連合(EU)離脱を決め、フランスやドイツが選挙を控えるいま、彼に率直に助言できる首脳は安倍氏のほかに見当たらない

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秋田氏によると、世界中でトランプ氏に「率直に助言できる首脳は安倍氏のほかに見当たらない」らしい。しかし、この見立ては苦しすぎる。日経は4日の「EU首脳、トランプ批判相次ぐ 仏大統領『受け入れられない圧力』」という記事で以下のように報じている。

【日経の記事】

【バレッタ=森本学】欧州連合(EU)が3日、マルタの首都バレッタで開いた非公式首脳会合に参加した首脳から、トランプ米大統領への批判の声が相次いだ。オランド仏大統領は開幕に先立って記者団に、EUや欧州を軽視する発言を繰り返すトランプ氏の言動を「受け入れられない圧力」だと語った。

オーストリアのケルン首相は「トランプ氏は彼のレトリックではなく、行動で判断されなければならない。しかし今、彼は心配するに十分な行動をとっている」と指摘。イスラム圏7カ国からの入国禁止などの政策を非難した

EUのトゥスク大統領は首脳会合を前に加盟国首脳に送った書簡で、米新政権を中国やロシア、イスラム原理主義と並ぶ「外的脅威」だと名指しして批判。会議終了後の記者会見では「大西洋間(欧米)の協力はEUの最優先事項であることに変わりないが、EUの強さについて、我々が自信を取り戻す必要もある」と述べた。

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トランプ政権の人権問題を聞かれて「ノーコメント」で通す日本の首相より、「欧州首脳」の方が「率直に助言できる」可能性ははるかに高いのではないか。森本学記者の記事によれば、「オーストリアのケルン首相」は「イスラム圏7カ国からの入国禁止などの政策を非難した」実績がある。トランプ氏に率直な助言ができる首脳は誰かと考えた時、秋田氏がなぜケルン首相などを外して「安倍氏」を唯一の候補として挙げたのか謎だ。

秋田氏の記事から理由を探せば「英国が欧州連合(EU)離脱を決め、フランスやドイツが選挙を控える」からとなるのだろう。だが、EU離脱を決めるとなぜ「率直な助言」ができなくなるのかは教えてくれない。「フランスやドイツが選挙を控える」と秋田氏は言うが、オランド大統領は大統領選に出ないので、選挙をあまり意識せずに「助言」できる気もする。そもそも、英仏独以外の首脳については「率直な助言」ができない理由を何も語っていない。

こんな完成度の記事を朝刊1面に載せるのが「コメンテーター」の仕事なのだろうか。もう一度よく考えてほしい。

※記事の評価はD(問題あり)。秋田浩之コメンテーターへの評価もC(平均的)からDに引き下げる。秋田氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経 秋田浩之編集委員 「違憲ではない」の苦しい説明
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post_20.html

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