2017年2月15日水曜日

データとの齟齬が惜しい日経「社員寮 じわり復権」

14日の日本経済新聞夕刊総合面に載った「社員寮 じわり復権 福利充実で人材確保 人脈や企画力も育成」という記事の目の付け所は悪くない。「社員寮 じわり復権」という見出しには意外性もある。ただ、グラフが苦しい。「独身寮の保有率は回復してきた」とのタイトルが付いているが、2015年と16年は保有率が前年を下回っている。

成田山新勝寺 光明堂(千葉県成田市)
        ※写真と本文は無関係です

記事では以下のように書いている。

【日経の記事】

バブル崩壊後、社員寮を抱える企業は資産圧縮をねらい、売却する動きが強まった。資産からどれだけ収益があがるかを厳密にみる流れも定着し社員寮の新設に積極的な企業は多くなかった。

労務研究所(東京・港)によると、調査対象の企業のうち16年に独身寮を保有しているのは15.5%。東日本大震災による景気低迷により保有率が一段と低下した12年を底に上昇してきた

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グラフでは確かに「12年を底に上昇」しているが、15年からは再び低下している。グラフで示した06年からの推移を見ると、一進一退とでも呼ぶべき流れだ。これだと「社員寮 じわり復権」と言われても説得力に欠ける。

ついでに言うと「バブル崩壊後、社員寮を抱える企業は資産圧縮をねらい、売却する動きが強まった」と書くのならば、バブル崩壊前には「保有率」がどの程度だったのかに触れた方がいい。

さらについでに、いくつか指摘しておきたい。

【日経の記事】

消防車両国内最大手のモリタホールディングスは4月、兵庫県三田市に社員寮を新設する。

◎漢字が続き過ぎ

消防車両国内最大手」は漢字が続き過ぎだ。最初は「消防車」「両国」と読みそうになった。「消防車両で国内最大手のモリタホールディングス」とすれば、簡単に問題は解消する。

【日経の記事】

みずほ証券の石沢卓志上級研究員は「リストラが一巡したうえ働き方改革が始まり、福利厚生の充実にカジをきる企業が目立ち始めた」と指摘する。

安定収益が見込める用途として社員寮にする動きも出ている」(みずほ証券の石沢氏)。共立メンテナンスの16年4~11月の社員寮事業の売上高は前年同期比8%増えた。

◎社員寮にして安定収益?

みずほ証券の石沢卓志上級研究員」の「安定収益が見込める用途として社員寮にする動きも出ている」というコメントは理解しにくい。企業が社員寮を新設すると「安定収益が見込める」のか。常識的には考えにくい。社員から取る家賃はかなり低く抑えているはずなので、社員寮だけ見れば赤字だろう。

ビルのオーナーなどの立場から見れば、他社に貸し出す形で「安定収益が見込める用途として社員寮にする動き」が出ても不思議ではないが、記事では誰から見た「安定収益」なのか明示していない。その場合、文脈から判断して「自社の社員向けに寮を新設する企業」から見た「安定収益」になるはずだ。

※記事の評価はC(平均的)。

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