杖立温泉(熊本県小国町) ※写真と本文は無関係です |
社内での地位を確立している水野編集委員に「こんな内容の記事じゃダメでしょ」と注文を付けられる企業報道部のデスクはいないかもしれない。ただ、何十年も記事を書き続けてきて、「結局は宣伝臭い安直な記事しか書けなくなった」ではあまりに寂しい。「このままでよいのか」を水野編集委員にはよく考えてほしい。
記事の全文は以下の通り。
【日経の記事】
企業の採用活動にもIT(情報技術)が浸透してきた。人材サービスのビズリーチ(東京・渋谷)が選考の進捗状況や面接の評価を一元管理する「HRMOS(ハーモス)採用管理」を開発するなど、支援システムが広がり始めている。労働集約的だった採用活動の効率化や選考過程の「見える化」が進んでいる。
IT活用はまず、採用活動そのものの革新を後押しする。グルメ情報サイト運営のRetty(レッティ、東京・品川)は、管理が煩雑だった米国流の採用がやりやすくなり、より注力できるようになった。
米グーグルやフェイスブックでは「リファラル(紹介)採用」といって、社員が自分の人脈や友人のなかから候補者を選び、転職を働きかける方式が活発。自社の企業文化をわかっている社員自身が採用活動に携わることで、早くから会社に適応し成果を出せる人材を見つけやすいためだ。
ただリファラル採用は、候補者を口説き落とすのに1年以上かかることも珍しくない。面接を社内の誰が担当し、計何回実施するかも相手によって異なる。新卒一括採用と違い、選考過程を社内で共有するにはかなりの労力が要る。
これをレッティは採用管理システムの導入で大幅に省力化した。約80人の社員全員が事業の成長の担い手を発掘する「全員採用」を掲げ、推進体制を整えた。IT活用をテコに人材資源を厚くしている例だ。
ITで選考過程を「見える化」したことが思わぬ経営上の効果を生んだのが、インターネット動画広告の製作を支援するViibar(ビーバー、東京・品川)だ。面接した社員がどんな問題意識を持っているか把握し、社員のベクトル合わせに役立てている。
中途入社希望者らと面接した社員は、その評価結果をシステムに書き込む。そこには会社が提供すべきサービス内容など経営戦略についての社員の考え方も表れる。経営者にとって貴重な情報だ。
ビーバーのビジネスモデルは動画の作り手と顧客の企業をネット上で結びつけることだが、「企画段階から踏み込んで企業に提案することで、より価値を生める」(小栗幹生取締役)。社員数が現在の約50人に増える過程で、その基本戦略に人によってズレが生じることもあった。「見える化」により、会社のめざす方向の共有を改めて進めることができたという。
どんな会社でありたいか、社員の考えがバラバラだと組織の力が半減する。ITを集団の力の底上げにつなげている例といえる。
人工知能(AI)を使った採用や人事の支援システムも実用化され始めている。自社で活躍している人材はどんな行動パターンかなどをAIが学習し、適性判断や社内の人材登用に生かすというものだ。
ITが企業に浸透すればするほど、社員は、人間がこなした方がいいことや機械による代替が難しい仕事にシフトしていく必要がある。人脈を活用した即戦力の発掘や社内のベクトル合わせはその例だろう。ITと人の「協働」によって、企業の競争力をいかに高めるか。来年はますます大きな課題になる。
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一読すれば誰でも分かるというものではないが、これは「ビズリーチ」の1社宣伝物の記事だ。「HRMOS(ハーモス)採用管理」のホームページによると、記事に出てくる「レッティ」も「ビーバー」もビズリーチが開発した採用管理システムのユーザーだ。
しかし、それを記事中で明らかにしてしまうと、ビズリーチの宣伝だとバレバレになる。なので、水野編集委員も手は打っている。レッティやビーバーがどこの「支援システム」を使っているのか隠している。
「支援システムが広がり始めている」と1社だけではないような書き方をしているのも、宣伝臭さを隠すための方策と考えれば腑に落ちる。
本当に「支援システムが広がり始めている」のであれば、複数の支援システムを記事で紹介すればいい。しかし面倒だったからか他に適当な事例がないからか、水野編集委員はビズリーチとそのユーザーに頼って記事を仕上げてしまう。
それでも、記事をしっかり書けていれば「広告的な記事」としては問題ない。しかし、そうもなっていない。記事の中身にいくつかツッコミを入れてみよう。
◎そんなに「新卒一括採用」と違う?
「リファラル採用」について「新卒一括採用と違い、選考過程を社内で共有するにはかなりの労力が要る」と水野編集委員は書いている。その理由として「リファラル採用は、候補者を口説き落とすのに1年以上かかることも珍しくない。面接を社内の誰が担当し、計何回実施するかも相手によって異なる」点を挙げている。
これに納得できるだろうか。まず採用に要する期間に関しては、長い方が情報を共有しやすいはずだ。「リファラル採用」の方がじっくり時間をかけるのであれば、情報共有のための時間も多く確保できる。
「面接を社内の誰が担当し、計何回実施するかも相手によって異なる」のは「新卒一括採用」も似たようなものだと思えるが、仮に「新卒一括採用」では面接を担当する人は全て同一人物で、回数も同じだとしよう。だからと言って「リファラル採用」の方が情報共有が難しいとは言い切れない。
面接担当者や面接回数が決まったら、その情報を関係者で共有すれば済む。これだけならば、わざわざ新たなシステムを導入すべき話とも思えない。「ITで採用活動」などと大げさに言う必要もなさそうだ。
◎具体的なデータは?
「レッティは採用管理システムの導入で大幅に省力化した」と水野編集委員は言い切っているが、「大幅」という漠然として情報を提供しているだけで、具体的な数値は教えてくれない。この辺りはいかにも宣伝臭い。
例えば「リファラル採用に要する期間は1人当たり平均6カ月かかっていたが、システムの導入によって2カ月程度まで短縮できた」などと書いてあれば、「確かに効果があるんだな」と実感できる。だが、そうした大きな効果は出ていないのだろう。出ていれば、水野編集委員も数字を出して紹介したはずだ。
◎そんな「効果」でよければ…
「ビーバー」の事例はさらに辛い。「中途入社希望者らと面接した社員は、その評価結果をシステムに書き込む」。その内容が「経営者にとって貴重な情報」になるらしい。
そういう効果がないとは言わない。だが、「経営戦略についての社員の考え方」を知りたいのならば、そのための意見交換の場を作ったりする方が、よほど効率的で効果も大きい気がする。
面接した人に対する「評価結果」に「経営戦略についての社員の考え方」が表れるのは、事例としてはかなり限られているのではないか。そもそも「約50人」しかいない会社で「HRMOS(ハーモス)採用管理」のようなものに頼らないと「社員の考え方」を把握できないのならば、そちらの方を問題視した方がいいのかもしれない。
※記事の評価はD(問題あり)。水野裕司編集委員への評価もDを維持する。水野編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。
通年採用で疲弊回避? 日経 水野裕司編集委員に問う(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/11/blog-post_28.html
通年採用で疲弊回避? 日経 水野裕司編集委員に問う(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/11/blog-post_22.html
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