2016年11月3日木曜日

日経 宮本岳則記者「スクランブル」での不可解な解説

3日の日本経済新聞朝刊マーケット総合1面に載った「スクランブル~『先回り投資家』の憂鬱
為替と株価の乖離に弱み」で不可解な記述に出くわした。最近の日本市場でアクティブファンドが市場平均に勝てない理由を宮本岳則記者が分析しているのだが、「日銀のETF買い」が入ると「(株価は)業績低迷銘柄ほど上がりやすくなる」との説明は納得できなかった。
独立自尊碑(大分県中津市) ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

アクティブ投信の存在意義は市場平均に勝つこと。だが運用成績を見ると苦悩が分かる。日銀がETF購入の増額を決めた7月の金融政策決定会合前日を起点に基準価格の騰落率を見ると、東証株価指数(TOPIX)を下回る投信が目立つ。日銀がETFで市場を丸ごと買うため、投信が保有しにくい業績低迷銘柄や流動性が低い小型株ほど上がりやすくなるためだ

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まず「日銀がETFで市場を丸ごと買うため、投信が保有しにくい業績低迷銘柄や流動性が低い小型株ほど上がりやすくなるため」という文では「ため」を繰り返している。拙い印象を与えるので避けた方がいい。

本題に入ろう。まずは宮本記者の説明を受け入れて、日銀のETF買いで「投信が保有しにくい業績低迷銘柄や流動性が低い小型株ほど上がりやすくなる」としよう。ならば「市場平均に勝つこと」は簡単だ。流動性の高い「業績低迷銘柄」に資金を集中させればいい。そうすれば、売却時の値崩れをあまり心配せずに、市場平均を簡単に上回れる。流動性は譲れないとしても、高いリターンが確実に期待できるのであれば、「業績低迷銘柄」は買えるばずだ。なのに、なぜアクティブファンドのファンドマネジャーはそうしないのか。

記事によるとアクティブファンドは「『日銀買い』に勝つため、変化の目をいち早く見つけようと躍起」らしく、「日米金利差拡大→円安方向の安心感から、外需銘柄には買いが入っていた」という。アクティブファンドの多くが「業績回復ストーリーに期待」して「決算発表の確認前にリスクをとって動いた」とすれば、あまりに愚かだ。あえて「日銀買い」に勝ちにくい道を歩んでいるのだから。

だが、実は宮本記者の説明の方に問題があるのではないか。「日銀がETFで市場を丸ごと買う」と「業績低迷銘柄ほど上がりやすくなる」かどうかを考えてみたい。

基本的には「業績好調銘柄」の株価は上がりやすく、「業績低迷銘柄」は下げやすい。ここに「日銀のETF買い」が加わるとどうなるか。好調銘柄は上げ幅が大きくなり、低迷銘柄は下げ幅が縮小して、場合によっては上がる--といった影響が出てきそうだ。だが、「業績低迷銘柄ほど上がりやすくなる」わけではない。

好調銘柄の方が日銀のETF買い以外の買いがより多く期待できるのだから、低迷銘柄よりも「上がりやすくなる」はずだ。だからアクティブファンドは「『日銀買い』に勝つため」に、業績改善が見込める銘柄への投資を進めたのではないのか。


※記事の評価はD(問題あり)。暫定でDとしていた宮本岳則記者への評価はDで確定させる。

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