問い合わせと回答は以下の通り。
震災後の熊本城(熊本市) ※写真と本文は無関係です |
【FACTAへの問い合わせ】
FACTA 発行人兼編集主幹 阿部重夫様
11月号の「日経が中間決算で480億円の為替差損!」という記事についてお尋ねします。記事には「日経は中間決算で累積為替差損480億円を『包括利益』の喪失として計上した。包括利益とは平たく言えば、含み損のこと」との記述があります。「包括利益」は純利益に有価証券など保有資産の時価変動分を加味した利益のことです。これを「平たく言えば、含み損のこと」と捉えるのは無理があります。「包括利益が100億円」という場合、例えば純利益120億円から含み損20億円を差し引いたものとなります。しかし「包括利益とは平たく言えば、含み損のこと」であれば、包括利益は20億円に近い金額となるはずです。
また、「包括利益=含み損」と理解すると、今回の記事では「日経の為替差損480億円=日経の含み損の喪失480億円」となってしまい、為替差損が日経の業績のプラス要素となってしまいます。「包括利益とは平たく言えば、含み損のこと」との説明は誤りと考えてよいのでしょうか。「平たく」が入っているとは言え、記事の解説は「包括利益」の正確な定義と大きく乖離しています。記事中の説明に問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
ついでで恐縮ですが、以下のくだりも理解に苦しんだので、問い合わせさせていただきます。
「FT買収でマンパワーを関連部門にとられ、従来もひどかった現場の負担はますます重くなった。『お前ら、原稿製造機になりきらないと過労死するぞ』と、飲み屋で先輩記者が後輩を叱る光景が目に浮かぶ」
これを読むと「原稿製造機になりきれば過労死を避けられる」との印象を抱きます。しかし「原稿製造機になりきれ」と言われると「仕事を選り好みせず、会社に言われるままひたすら原稿を吐き出し続ける疲れを知らない機械のような記者になれ」と求められているような気がします。それはむしろ過労死への道ではありませんか。
上記のくだりはどう解釈すればよいのでしょうか。個人的には「お前ら、原稿製造機になりきって会社から求められるままに記事を書き続けていたら過労死するぞ」となっている方が、日経記者への助言としては違和感がありません。
【FACTAからの回答】
日頃よりご愛読、真に有難うございます。会計の専門家ならではのご教示、ご叱声、心より感謝申し上げます。本件記事の掲載にあたり、ご指摘の「包括利益」の解釈を含め、為替差損発生の経緯と、今後の会計処理等について日経新聞に対して、文書により取材を申し込み、諸々の説明を求めましたが、「開示事実の通りである」と、事実上(一切)の取材拒否を受けました。「平たく」との表現に、その含意(ブラックボックス)をお汲み取りいただきたく存じます。
下段の書き方は、確かに分かりにくく、誤解を招く舌足らずの表現だったと反省しています。
「官庁や企業の記者発表を鵜呑みにして、裏付け取材もせずに、どんどん書き飛ばさないと過労死するぞ」という、現場記者の嘆き、自虐とご理解ください。
貴重なご指摘とご叱声を賜り、心から御礼申し上げます。簡略ではございますが、日経との取材経緯を含め、ご理解を賜りたく存じます。引き続きご愛読の程、お願い申し上げます。
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阿部氏からの回答ではなかったが、当該記事に阿部氏がかなり関与していると見たのは、こちらの勝手な「憶測」なので、編集部からの回答で十分だ。
自分は明らかな「会計の素人」なのに、なぜか「会計の専門家」と断定されてしまった。これは何かの皮肉だろうか。ちょっと気になった。
「包括利益とは平たく言えば、含み損のこと」との説明が正しいかどうかに、日経の取材拒否は関係ない。「包括利益とは平たく言えば、純利益に含み損益を加味したもの」とでも書けば問題はなかったと思える。
ただ、「原稿製造機」のくだりに関しては「確かに分かりにくく、誤解を招く舌足らずの表現だった」と率直に認めている。これは前向きに評価したい。
※「日経が中間決算で480億円の為替差損!」という記事に関しては「包括利益は『平たく言えば含み損』? FACTAへの質問」(http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/10/facta.html)、「FACTA『日経が中間決算で480億円の為替差損』に思うこと」(http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/10/facta480.html)も参照してほしい。
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