2016年10月13日木曜日

「損保市場は長らく鎖国状態」? 日経「真相深層」の誤り

日本の損保市場は長らく鎖国状態にあった」--。この説明は誤りだと思える。しかし、13日の日本経済新聞朝刊総合1面の「真相深層~損保ジャパン、市場激変にらみ先手 電光石火の米大手買収 『15歳の巨人』開拓のテコに」という記事で筆者の高見浩輔記者は「長らく鎖国状態にあった」と言い切っている。なので日経に問い合わせを送ってみた。内容は以下の通り。
門司港(福岡県北九州市) ※写真と本文は無関係です

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 高見浩輔様

10月13日付の朝刊に掲載された「真相深層~損保ジャパン、市場激変にらみ先手」という記事についてお尋ねします。記事の中に「日本の損保市場は長らく鎖国状態にあった」との説明があります。しかし、「鎖国状態にあった」のは戦中の一時期ぐらいではありませんか。外国損害保険協会のホームページには以下の記述があります。

「1917年(大正6年)には、イギリス系を中心に外国保険会社は29社が営業し、約20%のマーケットシェアを占めていた。第二次大戦によりこれら外国保険会社は日本から撤退するに至ったが、第二次大戦の終結にともないGHQとともに外国保険会社は日本に再進出した。当初はGHQの営業免許により進駐軍の軍人・軍属等に限って営業していたが、1949年(昭和24年)に『外国保険事業者に関する法律』が制定されるにいたり、これらの外国保険会社も大蔵省の営業免許を取得し、漸次日本人・日本企業向けの営業を開始した」

例えば、米国系のAIU保険のホームページには「戦後間もない1946年、日本においてAIU保険会社の前身の会社が営業を開始して以来、外資系損害保険会社として長年にわたってお客さまからのご支援を賜り、60年以上の歴史の中で大きく成長してまいりました」との社長挨拶文が掲載されています。

こうした点を考慮すると「日本の損保市場は長らく鎖国状態にあった」との記述には疑問が拭えません。記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば「鎖国状態=外資が日本に進出できない状態」が損保市場で長く続いたと言える根拠を示してください。

日経では記事中のミスを放置したまま闇に葬り去る例が後を絶ちません。読者からの間違い指摘も当たり前のように無視してしまうのが習い性となっています。メディアとして責任ある行動を心がけてください。

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高見記者に弁明させれば「『鎖国状態』というのは外資系のシェアが非常に低い状態を指している」とでも言いそうな気がする。だが、シェアが低いからと言って国を閉じているわけではない。例えば日本の自動車市場では国産車のシェアが圧倒的だが、それでも「鎖国状態」でないのは明らかだ。


※この記事には他にも問題が多い。それらは「説明不足が目立つ日経 高見浩輔記者の『真相深層』」で触れたい。

追記)結局、回答はなかった。

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