2016年8月4日木曜日

18年卒の就活は「長期化」? 日経「ビジネスTODAY」に疑問

4日の日本経済新聞 朝刊企業総合面に「ビジネスTODAY~大学3年生、就活はや号砲 『短期化』…実は長期戦に 夏のインターン4割増」という記事が出ている。記事では「2018年卒業予定の大学3年生」について「実質的な『就活』は長期化する」と書いているが、どうも怪しい。
三柱神社(福岡県柳川市) ※写真と本文は無関係です

記事の最初の部分を見ていこう。

【日経の記事】

2018年卒業予定の大学3年生の「就活」がはや始まっている。来年の就職活動に備え、業界研究や社会勉強のためインターンシップ(就業体験)に参加する学生を受け入れる企業は今夏、前年比で約4割増える。3日までに来春卒の大学生(大学院生含む)の約7割が内々定を取るなど売り手市場が続く中、企業が早めに動き出している。経団連の指針見直しで今年、就活期間は短縮されたが、実質的な「就活」は長期化する

主要な就職サイトに掲載された今夏実施のインターンは延べ8600社。文部科学省などはインターンを採用活動に結びつけないよう求めており、経団連も「採用につなげない」としている。ただ、現実は学生の資質を把握できるインターンを採用に生かす企業も増えている。

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上記のくだりの後は個別企業の取り組みなどが続く。記事を最後まで読んでも、18年春卒について就活の長期化を示すデータは見当たらない。強いて言えば見出しにもなっている「インターンシップ(就業体験)に参加する学生を受け入れる企業は今夏、前年比で約4割増える」という数字ぐらいだ。しかし、インターン実施企業の増加は就活の長期化を意味するわけではない。

記事には「売り手市場の中、企業は早めに動き出している」とのタイトルが付いた図がある。そこでは「2016年春卒」と「2017年春卒」の就活スケジュールを比べていて、17年春卒では大学3年の7月にインターンが始まっている。18年春卒のインターンが現時点で始まっていたとしても「企業が早めに動き出している」という話ではなさそうに見える。

この図には他にも気になる点がある。図を単純に信じると「16年春卒」ではインターンはなかったことになる。しかし、常識的にはあり得ない。

日経も2014年8月11日付で「インターン延々と  2016年卒 長い就活変わるはずが…」という記事を載せている。この記事ではインターンの時期について「8月が最多」と書いており、問題の図と矛盾する。

今回の記事を読む限りでは、17年春卒と18年春卒で就活に関して大きな変化は見当たらない。そこで記者らが強引に話を作ったのではないか。「これだ」と思える中身を見つけられなかったのならば、企画の段階で紙面化を断念すべきだ。


※記事の評価はD(問題あり)。流合研士郎記者と遠藤邦生記者への評価も暫定でDとする。

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