2016年7月14日木曜日

「近代以降の天皇制度で最大級の改革」は日経の「過言」

天皇陛下 退位の意向」という日本経済新聞朝刊1面の記事に、井上亮編集委員による「天皇制、最大級の変革に」との解説記事が付いている。この中で「譲位が実現すれば、近代以降の天皇制度で最大級の改革といっても過言ではない」と井上編集委員と記事の最後に書いている。

二重橋(東京都千代田区)
近代以降」とは「明治に入ってから」と理解してよいだろう。大日本帝国憲法の下で天皇は「国の元首」であり「統治権を総覧」する立場にあった。そこから一変して、戦後には「日本国の象徴」となり、政治的な権力を失っている。これに匹敵するような「近代以降の天皇制度で最大級の改革」に「生前退位」は当たるのか。普通に考えれば、明らかに「過言」だ。「象徴天皇制の下での最大級の改革」とでもすれば問題はなかったと思えるが…。

ついでに言うと、以下の説明もよく分からなかった。

【日経の記事】

平成時代になって現天皇と戦争責任は切り離されたため、退位が論じられることはなくなった。しかし、天皇陛下が70歳代半ばを過ぎ、在位20年を迎えようとするころから高齢の陛下の負担が問題になり始めた。退位ではないが、公務を徐々に皇太子さま、秋篠宮さまに譲る「定年制」のような形も必要ではないかという意見もあった。

実際、秋篠宮さまが2011年の誕生日会見の際に「『定年制』というのは、やはり必要になってくると思います」と述べられている。

しかし、一足飛びの退位という議論までにはならなかった。

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定年制」と言うと、ある年齢に達したら仕事を辞めてしまうイメージがある。しかし記事では「公務を徐々に皇太子さま、秋篠宮さまに譲る『定年制』のような形」と書いた上で「一足飛びの退位という議論までにはならなかった」と述べている。負担を減らしながらも天皇としての仕事を続けるのであれば「定年制」とは言い難い。「定年までに徐々に公務を減らして、定年と同時に公務から完全に離れる」と言いたかったのかもしれないが、記事中の説明からそう理解するのは難しい。


※解説記事の評価はD(問題あり)。井上亮編集委員への評価も暫定でDとする。

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