2016年6月13日月曜日

ヤフーはソフトバンク連結対象外?週刊ダイヤモンドに問う

「これはかなり初歩的な間違いだな」と思える記事が週刊ダイヤモンド6月18日号に出ていた。こちらの勘違いという可能性もゼロではないので断定的に「誤り」とは言いたくない。だが、ダイヤモンド編集部が間違い指摘に対して完全無視を貫いている以上、回答を待っても意味がない。なので「記事の説明は誤り」との前提で話を進める。まずは「Inside~ソフトバンクが株売却で1兆円 市場が注目する巨額資金の使途」という記事に関して、ダイヤモンド編集部へ送った問い合わせを見てほしい。
筑後平野に沈む夕陽(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係です

【ダイヤモンドへの問い合わせ】

6月18日号の「Inside~ソフトバンクが株売却で1兆円 市場が注目する巨額資金の使途」という記事についてお尋ねします。筆者の北濱信哉記者はソフトバンクが日本ヤフーの株式を取得するとの観測に触れた上で以下のように書いています。

「そこで米ヤフーの保有する日本ヤフー株を買い取り、同社を連結対象化するため1兆円のキャッシュが用いられるのではないかとみる向きがあるわけだ」

「また、ややペースは鈍化しているものの成長を続ける日本ヤフーを連結対象に加えれば、ソフトバンクの企業価値を高めることにつながる」

これを見る限り、現在の日本ヤフーはソフトバンクの連結対象ではないはずです。しかし、6月9日にソフトバンクグループが出したニュースリリースのタイトルは「当社子会社(ヤフー株式会社)による公開買付けの開始に関するお知らせ」です。また、ソフトバンクグループの事業別の概要を見ると、ヤフー事業の「主要子会社及び関連会社」の中に「ヤフー株式会社」が入っています。

記事で言う「日本ヤフー」は「ヤフー株式会社」と同一の会社ではありませんか。その場合、日本ヤフーがソフトバンクグループの連結対象なのは明らかです。「米ヤフーの保有する35%分を買い取ることで初めて連結対象に入ってくる」と受け取れる記事中の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。正しいとすれば、その根拠も併せて教えてください。

付け加えると、この記事では「同社」の使い方に問題があります。

「ベライゾンは米国内においてソフトバンク傘下のスプリントの競合であり、日本ヤフー株が同社の手に渡るとソフトバンクの事業展開に支障を来す可能性が高まる」というくだりでは「同社=ベライゾン」と言いたいのでしょう。しかし、「同社」と「ベライゾン」の間には「日本ヤフー」「スプリント」「ソフトバンク」と3つも社名が出てきます。

「売却で手にした資金は、同社の説明通りなら財務体質の強化に充てられるところだが~」の部分も「同社=ソフトバンク」のつもりでしょうが、形式的に見れば「同社=スーパーセル」です。「同社」がどの会社を指すのか、迷う余地のない書き方をしてください。

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ヤフー(=日本ヤフー)に対するソフトバンクの出資比率は50%未満なので、「ヤフーは連結対象の子会社ではなく関連会社」と北濱記者が思い込むのは、まだ分かる。しかし、北濱記者は「現在、日本ヤフーの時価総額は約2兆9000億円。その株の43%をソフトバンクが保有し、35%を米ヤフーが保有する」と記事中で説明している。この場合、ヤフーがソフトバンクにとって「子会社または関連会社」なのは自明だ。子会社はもちろん関連会社でも「連結対象」になる(小規模な会社を除く場合はある)。それが分かっていたら「日本ヤフーを連結対象に加えれば」とは書かないはずだ。

「出資比率が43%もあるのに関連会社にもならずに連結対象外」という説明に担当デスクは疑問を抱かなかったのか。おまけに小見出しにも「ヤフーを連結対象へ」と入れている。最近のダイヤモンドの劣化を象徴する記事と言えるだろう。


※記事の評価はE(大いに問題あり)。問い合わせに対する回答がなかった場合、明らかな誤りを放置したと判断して、暫定でC(平均的)としていた北濱信哉記者への評価はF(根本的な欠陥あり)へ引き下げる。

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