2016年6月28日火曜日

東洋経済「健康格差」キャベツ1玉200円に驚く藤田和恵氏

週刊東洋経済7月2日号の特集「健康格差」の中に「短い平均寿命、子どもの糖尿病… 足立区は健康を取り戻せるか」という記事がある。筆者はジャーナリストの藤田和恵氏。最終段落で藤田氏は「驚いたのは、350ミリリットルの缶チューハイが80円を切っていたのに、キャベツは1玉200円もしたことだ」と書いていた。個人的には、藤田氏がキャベツの値段に驚いているのが驚きだった。
秋月の桜(福岡県朝倉市) ※写真と本文は無関係です

最終段落は以下のようになっている。

【東洋経済の記事】

ミナコさん宅を出た夕方、地域の激安スーパーの1つをのぞいてみた。驚いたのは、350ミリリットルの缶チューハイが80円を切っていたのに、キャベツは1玉200円もしたことだ。「野菜は高い」と具なし焼きそばを作っていた母親の言い分には確かに一理あった。懸命に働き、子どもを育てる若い家族がそんな二者択一を迫られる社会の仕組みがおかしいのではないか。単純明快な答えなどない。足立区の取り組みや、民間の人々の情熱は、理不尽な社会への挑戦でもある。

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キャベツと缶チューハイの値段に触れたのは、記事中の以下の話と関連している。

【東洋経済の記事】

足立は坂の少ない街だ。週末の昼下がり、花畑地区の住宅街をひたすら歩いていると、20代と思われる数組の家族が自宅車庫でバーベキューを楽しんでいるのを見つけた。

父親らは車庫の奥で缶チューハイ片手につまみにはしを伸ばしている。手前では鼻ピアスを付けたり、髪を金色に染めたりした母親たちが、鉄板で作った焼きそばを子どもたちに食べさせている。視界に入った焼きそばが肉も野菜も入っていない「具なし」だったのに驚き、取材の趣旨を告げたうえで「野菜は食べないんですか」と尋ねると、母親の1人がばつが悪そうにこう答えた。「野菜、高いんですよ」。

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◎キャベツの値段を初めて知った?

筆者の藤田氏はキャベツを買ったことがほとんどないのだろう。でなければ「キャベツ1玉200円」に驚くはずがない。ごく標準的な価格だ。キャベツの値段を知らないからと言って筆者を責めるつもりはない。しかし、記事中で驚いてみせると「読者のみなさん知ってましたか? キャベツって1玉200円もするんですよ」というニュアンスが出てしまう。そうなると「そのぐらい知ってるよ」と思わずにはいられない。


◎母親の言い分に一理ある?

「焼きそばには野菜を入れる方が望ましい」という前提があるとして(個人的にはこの前提に同意しない)、花畑地区の母親が「野菜、高いんですよ」という理由で焼きそばに野菜を入れていないことを「一理ある」と擁護できるだろうか。キャベツが1玉1万円ならば分かる。しかし、わずか200円だ。4分の1カットならば100円を切るはずだし、焼きそばに入れるだけならば十分な量がある。それほど高いとは思えない。

さらに言えば、母親たちには「鼻ピアスを付けたり、髪を金色に染めたり」する余裕があるようだ。なのに「200円のキャベツが高くて買えない」との弁明に納得できるだろうか。髪を染めるのを止めれば、キャベツが何十個と買えるのではないか。

藤田氏はバーベキューをしていた家族に関して「キャベツが80円で缶チューハイが200円ならば、缶チューハイではなくキャベツを買ったはずだ」と思っているのだろう。だから「二者択一を迫られる」と書いてしまう。しかし、「この家族にはキャベツと缶チューハイの両方を買う余裕があった」と考える方が自然だ。でなければ「ピアス」や「金髪」がうまく説明できない。

ゆえに「懸命に働き、子どもを育てる若い家族がそんな二者択一を迫られる社会の仕組みがおかしいのではないか」との主張に説得力はない。バーベキューをしていた家族には「金髪に染めたりする余裕があるのならば、それを我慢して子どもに野菜を食べさせてあげたら」とでも言ってあげればいいのではないか。少なくとも「母親の言い分には確かに一理あった」などと理解を示してあげる必要はない。


※記事の評価はD(問題あり)。藤田和恵氏への評価も暫定でDとする。特集「健康格差」に関しては「『JTがたばこ増税で潤う』? 東洋経済『健康格差』に疑問」も参照してほしい。今回の特集では、ハーバード大学 公衆衛生大学院教授のイチロー・カワチ氏へのインタビュー記事にも疑問を感じた。これについては「東洋経済『健康格差』イチロー・カワチ氏の極端な言い切り」で触れる。

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