2016年5月11日水曜日

「セブンイレブンが先駆者」? 誤り重ねる週刊ダイヤモンド

週刊ダイヤモンド5月14日号の特集「カリスマ退場~流通帝国はどこへ向かうのか」のPart3「カリスマが築いた帝国の軌跡」は問題が多い。まずは「『顧客目線』と『変化対応』 鈴木会長が貫いた二つの哲学」という記事に付けた表を取り上げたい。

亀山公園(大分県日田市) ※写真と本文は無関係です
ゼロからつくり上げてきた セブン-イレブンが初めて取り組んだ主なもの」とのタイトルが付いたこの表は、基本的に昨年6月6日号の特集「流通最後のカリスマ 鈴木敏文の破壊と創造」からの流用だ。1年も経たないうちに同じような表を載せる意味は乏しいし、手抜きとも言える。その上、この表には誤りが目立つ。まず、年表の一番上に出ている「1974年 世界初 既存小売店を組織化しチェーン展開開始」は間違いだ。昨年の特集に関するダイヤモンドへの問い合わせと回答を改めて紹介しておく。


【ダイヤモンドへの問い合わせ(2015年6月)】

6月6日号の「世界初がめじろ押し!恐るべしセブンの開発力」に関してお尋ねします。表中で「1974年 既存小売店を組織化しチェーン展開開始」が「世界初」となっています。しかし、資生堂のホームページによると、同社は1923年に日本初のボランタリーチェーンシステム「チェインストア制度」を導入したようです。ボランタリーチェーンなので当然に「既存小売店の組織化」です。記事では「コンビニ業界で世界初」と言っているのかとも思いましたが、「世界初」「日本初」「業界初」の3つに分けられているので、それもなさそうです。記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。正しいとすれば、その根拠も教えてください。

【ダイヤモンドの回答(2015年6月)】

資生堂はあくまで自社商品のみを扱う「ボランタリーチェーン」です。しかしここの趣旨は、あらゆる商品を扱う小売店舗の「チェーンストア」に関して論じており、まったく性格が違います。従いましてセブン‐イレブンが最初になります。

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表には「既存小売店を組織化しチェーン展開開始」としか書いていない。そして資生堂がセブンイレブンよりも前に「既存小売店を組織化しチェーン展開」を始めていたとすれば…。後は説明するまでもないだろう。

この表には他にも間違いだと思える説明が複数ある。新たにダイヤモンド編集部へ問い合わせを送ってみた。内容は以下の通り。

【ダイヤモンドへの問い合わせ】

5月14日号45ページの「セブン-イレブンが初めて取り組んだ主なもの」という表についてお尋ねします。この中に「84年 業界初 おでんの全国展開開始」と出てきます。しかし、当時のセブンは未出店地域が多く「全国展開」できる状況にはありませんでした。例えば四国に初出店したのは2013年になってからです。

「2001年 日本初 保存料、合成着色料なしのファストフード販売開始」もセブンが日本初ではないでしょう。例えば「くら寿司」を展開するくらコーポレーションの社長はホームページで「創業以来のコンセプトとして『四大添加物(化学調味料・人工甘味料・合成着色料・人工保存料)』を完全に排除した商品を開発・提供してまいりました」と述べています。これが本当ならば、2001年よりずっと前から「保存料、合成着色料なしのファストフード」は国内で販売されていたことになります。

上記の2点について、記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。正しいとすれば、その根拠も併せて教えてください。御誌では読者からの間違い指摘を無視して記事中の誤りを握りつぶす対応が常態化しています。メディアとして責任ある行動を心がけてください。

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ダイヤモンド編集部が間違い指摘を完全に無視するようになってから10カ月以上が経過した。今回の問い合わせにも回答はないだろう。なので、上記の件も「記事の説明は誤り」と推定するしかない。


※今回の特集については「セブン&アイ 反鈴木敏文派を『虫』と呼ぶ週刊ダイヤモンド」も参照してほしい。昨年の特集は「ダイヤモンド『鈴木敏文』礼賛記事への忠告」で論じている。

追記)結局、回答はなかった。

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