2016年3月14日月曜日

分析やや甘い東洋経済 又吉龍吾記者「そごう柏店撤退」(1)

東洋経済オンラインに3月13日付で載った「『そごう柏店』を撤退に追い込んだ過酷な事情 ベッドタウン百貨店『閉鎖ドミノ』の序章か」という記事は手堅くまとまっていて悪くない出来だったが、分析の浅さが気になった。記事では、セブン&アイ・ホールディングスが西武旭川店とそごう柏店の閉鎖を発表したのを受けて、両店が追い詰められた理由を探っている。ただ、「西武旭川店は人口減少、そごう柏店はショッピングセンターなどとの競争激化が響いた」という解説だけでは当たり前すぎる。筆者である又吉龍吾記者にはもう一歩踏み込んだ工夫を求めたい。
巨瀬川に咲く菜の花(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です

まずは、誤解を招きかねない書き方を1つ指摘したい。これに関しては、東洋経済に問い合わせを送り、回答も届いたので記事と併せて紹介したい。

【東洋経済オンラインの記事】

百貨店は都心の大型旗艦店を除くと、苦しい状況が続いている。今回閉鎖する西武旭川店は、その顕著な例の1つだ。旭川市の人口は1998年(36.4万人)以降、少子化や転出超過で減少の一途をたどる。2015年9月末では34.5万人となった。こうした状況から、「地方都市は百貨店が1店舗しか存続できないマーケットになった」(村田社長)。

【東洋経済への問い合わせ】

東洋経済オンラインの「『そごう柏店』を撤退に追い込んだ過酷な事情」という記事についてお尋ねします。記事では西武旭川店の閉鎖に関して「地方都市は百貨店が1店舗しか存続できないマーケットになった」という村田紀敏セブン&アイ・ホールディングス社長の発言を紹介しています。これを読むと、西武旭川店の閉鎖後に旭川の百貨店は1店のみになると解釈したくなります。しかし、西武旭川店は旭川最後の百貨店だったのではありませんか。

旭川にマルカツデパートという商業施設はあるようですが、百貨店ではなくテナントビルのようです。北海道新聞も3月8日の「西武旭川9月末閉店 道北、百貨店空白に」という記事で「(西武旭川店の閉鎖により)道内人口第2の都市・旭川を中心とする道北は百貨店空白地帯となる」と言い切っています。

セブン&アイの村田社長は一般論として「地方都市は百貨店が1店舗しか存続できない」と発言したのでしょう。しかし、今回の記事の流れで使ってしまうと「西武旭川店の閉鎖で旭川に百貨店は1店だけになる」との誤解を与えるのではありませんか。それとも、西武旭川店の閉鎖後も旭川に百貨店は残るのでしょうか。どう理解すればよいのか教えていただければ幸いです。

【東洋経済の回答】

当該段落では、大都市圏以外の地方都市における百貨店の状況について触れております。
「百貨店は〜続いている」は、その全体像について最初に触れております。「今回閉鎖する西武旭川店は〜34.5万人となった」では、旭川店における商圏人口の減少について触れております。最後の村田社長のコメントは、ご指摘いただいた通り、地方都市における百貨店の一般的見解について触れております。

つまり、当該段落では、「大都市圏以外の地方都市は、商圏人口の減少が続いており、百貨店は存続できたとしても、せいぜい1店舗程度という状況になっている」という内容になっております。

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まず、きちんと回答してくれた点を評価したい。ここが日経や週刊ダイヤモンドとは違うところだ。回答内容も基本的にはこれでいい。強いて言えば、「誤解を与えるのではありませんか」と聞いているので、それに関する見解が欲しかった。記事を改めて読んでも、今回のような書き方では「旭川には百貨店が1店残る」と解釈したくなる。どうすれば誤解を与えずに済むか、改善例を示しておく。

【改善例】

百貨店は都心の大型旗艦店を除くと、苦しい状況が続いている。今回閉鎖する西武旭川店は、その顕著な例の1つだ。旭川市の人口は1998年(36.4万人)以降、少子化や転出超過で減少の一途をたどる。2015年9月末では34.5万人となった。「地方都市は百貨店が1店舗しか存続できないマーケットになった」(村田社長)と言われるが、旭川ではその1店舗さえも消えてしまう。

※この記事の「分析の浅さ」に関しては(2)で触れたい。

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