梅林寺(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です |
10人以上の取材班を構成して連載する日経の1面企画には共通するパターンがある。(1)記者はまず記事に使えそうな事例をできるだけ多く集める(2)集めた事例を適当につなぎ合わせてデスクが記事に仕上げていく(3)事例はインパクトのあるものが優先される(4)インパクトのある事例をなるべく多く並べる--といったところだ。
これだけだと、それほど問題がないように見える。しかし、重大な欠陥が2つある。まずは「何を訴えたいのか」が希薄になる点だ。記者は、とにかく使えそうな事例を集めることを求められる。そしてデスクは、使えそうな事例をどうやって1本の記事に仕上げるのかに頭を絞る。
共通性がありそうな3つぐらいの事例があれば、それらで1本の記事を強引に完成させてしまう。記事には結論や主張らしきものも付いている。しかし、それは使えそうな事例を並べた上で、どういう結論ならば記事として成立するかという視点から捻り出されたものだ。
訴えたい結論に説得力を持たせるために具体的事実を積み重ねて作るのが本来の姿なのに、具体的事実の列挙に合う結論を後付けで考えるのだ。そのため、取って付けたような結論になる記事が続出してしまう。
もう1つの弊害は詰め込み過ぎだ。「まず事例」なので、集めた事例をなるべく多く並べて「しっかり取材してるでしょ」とアピールしがちになる。しかし、事例1つ当たりの行数が足りず説明不足に陥りやすい。
今年の「アジアひと未来」は「事例を集めて、とにかく詰め込んで」という作りにはなっていない。1日の第1回「目覚める40億人の力」では、3人のアジアの「ひと」を取り上げているが、過半はソフトバンクグループ副社長のニケシュ・アローラ氏の人となりを紹介する構成になっており、行数は十分に割けている。3日の「覇権を再び 野心隠さず」では、紹介する人をアジアインフラ投資銀行(AIIB)初代総裁の金立群氏に絞っている。日経の正月企画では考えにくい作りだ。
従来の方式をなぜ改めたのかは不明だが、社内でも多くの人がその問題点には気付いていたので、ようやく望ましい方向へ見直しが進んだのかもしれない。とにかく、明るい兆しが見えたのは確かだ。今後に期待しよう。
※第1回・第2回の記事に対する評価はC(平均的)。
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