「こういうのを待っていたんだよ」と快哉を叫びたくなる記事が週刊東洋経済1月16日号に出ていた。巻頭特集「
独占追跡~村上強制調査」がそれだ。村上世彰氏が相場操縦の疑いで証券取引等監視委員会の強制調査を受けた件では「一体、何が問題なの」という疑問が当初から強かった。今回の記事によれば、昨年12月4日に村上氏がホームページに反論を載せた後は同氏を犯人扱いする動きが止まり、「
強制調査についての報道そのものがなされていない」という。
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水天宮(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です |
この問題がずっと引っかかっていたので、特集は一気に読めたし、内容は期待に違わぬものだった。記事では、強制調査の対象となった2014年6月27日と7月16日のTSIホールディングス株取引について詳細に記述している。記事の内容が事実ならば、村上氏の取引に大きな問題は感じられない。記事は村上氏側の弁護士の協力を得て作られているようだし、証券取引等監視委員会に取材した形跡はない。なので「監視委員会の勇み足」とは断定できないものの、漠然としていた問題の輪郭がかなり浮かび上がってきたのは間違いない。
「
本誌が独自に追跡した情報のかぎりでは、誰も知らないような新事実が今後出てこないかぎり、相場操縦として世彰氏の刑事責任を問うのは容易ではなさそうだ」という記事の結論は納得できる。法律の専門家3人を使って「相場操縦」を解説させたのも、今回の件を理解する上で役立った。
日経ビジネス2015年12月7日号で「
時事深層~村上世彰氏、強制調査 アクティビスト活発化に警戒感」という浅い分析記事を載せていた田村賢司主任編集委員などは、今回の特集を参考にしてほしい。「深層」と呼ぶに値する記事がどういうものか少しは分かるはずだ。
※特集の評価はA(非常に優れている)。書き手については暫定でBとしていた山田雄一郎記者と島大輔記者を暫定Aとする。暫定でCとしていた渡辺拓未記者も暫定Aに引き上げる。
※日経ビジネスの田村賢司主任編集委員については「日経ビジネス『村上氏、強制調査』田村賢司編集委員の浅さ」を参照してほしい。
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