シーサイドももち海浜公園(福岡市早良区) ※写真と本文は無関係です |
2007年の中越沖地震では新潟県にある自動車部品工場が被災して供給がストップ。自動車メーカーは長期間、操業停止に追い込まれた。よほどの離島を別にすれば、国内のどこかが戦場になった時点で日本経済は立ちゆかない。今後の日本の戦争は勝つにせよ、負けるにせよ、ミサイルを何発か撃てばおしまいだ。
となると、専守防衛の概念も変わらざるを得ない。敵軍が上陸してくるまで傍観している場合ではない。
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「敵軍が上陸してくるまで傍観している場合ではない」と訴えたいので「ミサイルを何発か撃てばおしまい」と言い切ってしまったのだろう。大石編集委員がその根拠としているのは、中越沖地震での自動車メーカーの操業停止だ。しかし、この説明は非常に苦しい。
日経の過去の記事によると、2007年の中越沖地震の影響で「トヨタなど国内12社の完成車工場が1週間程度止まった」そうだ。まず、1週間程度の操業停止を「長期間、操業停止に追い込まれた」と表現するのは、かなり大げさだ。「1週間程度=長期間」を認めるとしても、自動車メーカーの操業停止で日本経済が壊滅的な打撃を受けたとは言い難い。
日本は2011年の東日本大震災でさらに大きな被害を受けた。重大な原発事故まで引き起こした東日本大震災を経ても、日本経済はそれなりに持ちこたえている。「ミサイルを何発か撃てばおしまい」と諦める理由はない。さらに言えば、日本経済が立ちゆかなくなっても、日本(あるいは日本人)が「おしまい」になるわけではない。そのぐらいは大石編集委員にも分かるはずだが…。
記事の結論部分も納得できなかった。
【日経の記事】
1915年から16年にかけて中東のガリポリ半島で英軍とトルコ軍がぶつかった。第1次大戦で有数の激戦というだけでなく、陸海空戦力が初めて一体運用された戦いとして知られる。同大戦は戦争の姿を変えたが、これもその一つだ。
それから1世紀。再び戦争は変わりつつある。米軍は海空一体のエア・シー・バトルに向け、編成替えを進める。日本にも同じような名前の部隊はできたが、自衛隊全体を劇的につくり変えるには至っていない。
ソウカエンは近年、離島奪還作戦も披露するようになったが、ミリオタが喜ぶのは相変わらず10式戦車の華麗なスラローム射撃などである。航空決戦時代に大艦巨砲にこだわった旧軍の愚行を笑えるだろうか。
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「再び戦争は変わりつつある。米軍は海空一体のエア・シー・バトルに向け、編成替えを進める」という説明が引っかかる。「再び戦争は変わりつつある」例として「海空一体のエア・シー・バトル」を大石編集委員は挙げる。以前は海は海、空は空で分かれて戦っていたというなら分かるが、「第一次世界大戦で既に陸海空戦力が一体運用されていた」と大石編集委員自身が書いている。なのに、ここに来ての「海空一体」の何が新しいのか。
「エア・シー・バトル」とは、米国が中国の軍拡に対応して考えている戦略らしい。それなりに新しい部分はあるのだろうが、「戦争は変わりつつある」と言い切るならば、「確かに変わりつつあるな」と納得できる材料を記事中に提示してほしかった。
最後の段落はさらに引っかかる。「ソウカエン(総合火力演習)は近年、離島奪還作戦も披露するようになった」のならば、時代の変化に合わせて自衛隊も対応を進めていると考えられる。なのに大石編集委員は「旧軍の愚行を笑えるだろうか」と結ぶ。「ミリオタが喜ぶのは相変わらず10式戦車の華麗なスラローム射撃など」だからのようだ。ミリオタが何を喜ぶかは基本的に関係ないはずだ。それとも「ミリオタが離島奪還作戦を喜ぶようにならないと、大艦巨砲にこだわった旧軍の愚行を自衛隊は笑えない」とでも大石編集委員は考えているのだろうか。
社内の立場上、大石編集委員はかなり好き勝手なことが書けるのだろう。だからと言って、根拠薄弱な主張を垂れ流していいわけではない。次に記事を書くときには「断定できるだけの根拠があるのか」を厳しく自らに問いかけてほしい。
※記事の評価はD(問題あり)。大石格編集委員への評価もDを据え置く。同編集委員については「日経 大石格編集委員は東アジア情勢が分かってる?」も参照してほしい。
記事には[岸伸介の孫である安倍晋三は吉田茂流の軽武装路線はおきに召すまいが、---]
返信削除という下りがあるけど、軍事の時代が違うのにこんな感情的な記事を書くようでは粗末と言われても仕方ないのでは、
日経は他紙よりましだと思っていたが、こんな傲慢な編集委員が居ては幻滅、止めようと思うようになった。