早稲田大学大隈庭園(東京都新宿区) ※写真と本文は無関係です |
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【日経の記事】
先日、東証1部上場の中堅製造業の経営者から非常に興味深い話を聞いた。東日本大震災で工場が被災したが、地震保険の保険金を請求しても様々な除外規定によって厳しく査定されて減額された。結局、保険金は想定していたよりも少額で、その後は保険料の値上がりもあって割に合わなくなった。
この企業は震災後は地震保険に加入していないが、今後も地震活動が活発になるかもしれないので被災したときの事業再開の備えは必要だ。そこで「自衛手段として内部留保を分厚く蓄えておくしかない」と、この経営者は話す。
震災や最近頻発している台風や水害などの経験から、大規模な自然災害への危機感は企業の間で強まっているはずである。企業が賃上げや投資を控えて内部留保をためる理由は「自己保険」という意識もあるのではないか。
もちろん各企業が内部留保をため込むことは、経済全体にとっては非効率である。もともと地震保険は地震や津波のリスクを広く国内、あるいは再保険によって国外にも分散し、企業が過剰な内部留保をためないように誘導する機能があったはずである。地震保険が今より使いやすいものになれば企業は過剰な内部留保を削減し、賃上げや投資にもっと資金が回るのではないかと思われる。
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内部留保は現預金として残る部分もあるが、多くは設備投資などに回る。この前提で書いていれば、上記のような説明にはならないはずだ。
地震で被災した時の備えに「内部留保を分厚く蓄えておく」と言っても、それが工場になっているならば「被災したときの事業再開の備え」になるどころか、被災対象になってしまう恐れが大きい。コメントしている中堅製造業の経営者にも「内部留保=現預金」との誤解があるのだろう。
「企業が賃上げや投資を控えて内部留保をためる」との記述からも「内部留保に回す=投資には回らない」との誤解を感じる。「各企業が内部留保をため込むことは、経済全体にとっては非効率である」との説明に関しては基本的に間違っている。社会に有用な設備投資に内部留保が回っている状態を想定すれば、「非効率」とは言えないはずだ。
「地震保険が今より使いやすいものになれば企業は過剰な内部留保を削減し、賃上げや投資にもっと資金が回るのではないかと思われる」との説明にも、やはり「内部留保に回す=投資には回らない」との前提が見え隠れする。結局、この記事では「内部留保」を「現預金」に置き換えれば問題がほぼ解決する。
※記事の評価はD(問題あり)。
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