谷津干潟(千葉県習志野市) ※写真と本文は無関係です |
【日経ビジネスの記事】
(インターネット経由で会計処理を自動化できるクラウド会計ソフトの)freeeの最大の特徴は、簿記や会計の専門知識がなくても、経費の処理から決算書類の作成まで、ほぼ自動でできること。例えば銀行口座やクレジットカードのデータを取り込み、勘定科目などをプログラムが自動推測して仕分ける。利用料は個人事業主なら月980円、法人は1980円。経理の担当者を雇う余裕のない中小企業や個人事業主は「経理にかかるコストを50分の1に減らすことができる」(佐々木社長)ようになり、経営資源の再配分が可能だ。
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会計ソフト自体は昔からある。もちろん「freee」は色々と進化している面もあるのだろう。しかし、会計ソフトで経理作業を簡素化できるといった話ならば「革命」ではない。個人事業主の中には既存の会計ソフトを使って自分で経理作業をしている人も多いはずだ。そういう人も「経理にかかるコストを50分の1に減らすことができる」とは思えないが…。
4つ目は「0円決済ツール」。こちらの見出しは「明日からでも商店主になれる」だ。この記事も疑問が多い。
【日経ビジネスの記事】
東京・下北沢でオーダーメードの自転車を扱うライダーズカフェはこの冬、導入していたPOS(販売時点情報管理)端末を撤廃する予定だ。スマホでカード決済できる「コイニー」を使うだけで十分だと考えたためだ。顧客平均単価が7~8万円の同社では、売り上げの5割以上がクレジットカードで決済されている。カードが利用できないのは論外だが、月額費用もかからず、スマホだけあれば明日からでもすぐに決済が開始できるメリットは非常に大きいという。
下北沢店を開業するに当たって導入したPOS端末には初期費用として18万円、月額利用料3万円がかかった。「コストや利便性を考えれば、もう既存のPOS端末に戻る選択肢はあり得ない」とライダーズカフェの飯塚航生氏は語る。10月にオープンした吉祥寺店では、オープン当初からPOSレジは導入しなかった。
開業資金はほとんど不要で誰もが今日からでも商店主になれる日は既にきている。
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「開業資金はほとんど不要で誰もが今日からでも商店主になれる日は既にきている」という説明は無理がある。店舗利用不可の賃貸物件に住んでいる人が今日から商店主になろうとしても難しいだろう。クレジットカード決済の仕組みを無料で導入できるとしても、不動産関連の費用などをフィンテックがゼロにしてくれるとは思えない。
一戸建ての持ち家があれば、「今日からでも商店主になれる」かもしれない。ただし、それは「コイニー」を使って低コストでカード決済ができるといった話とは関係が乏しい。商店主になる場合、現金しか受け付けないとの選択がある。現金決済のみにすれば、「コイニー」を使うよりも低コストで店を始められるだろう。そう考えると、商店主になることに関してフィンテック「革命」をもたらしてくれる可能性は低い。
一戸建ての持ち家があれば、「今日からでも商店主になれる」かもしれない。ただし、それは「コイニー」を使って低コストでカード決済ができるといった話とは関係が乏しい。商店主になる場合、現金しか受け付けないとの選択がある。現金決済のみにすれば、「コイニー」を使うよりも低コストで店を始められるだろう。そう考えると、商店主になることに関してフィンテック「革命」をもたらしてくれる可能性は低い。
上記のくだりには他にも気になる点があった。日経BP社に問い合わせを送ったので、同社からの回答と併せて紹介したい。
【日経BP社への問い合わせ】
日経ビジネス編集部 染原睦美様 杉原淳一様 飯山辰之介様
12月14日号の特集「知らぬと損するフィンテック」についてお尋ねします。33ページの記事で「スマホで決済できる『コイニー』」について「月額費用もかからず、スマホだけあれば明日からでもすぐに決済が開始できるメリットは非常に大きいという」と説明されています。しかし、「コイニー」のサイトによると、審査などの関係で申し込みから利用開始までに1週間程度はかかるようです。「スマホだけあれば明日からでもすぐに決済が開始できる」との記述は誤りと考えてよいのでしょうか。正しいとすれば、その根拠を教えてください。
ついでで恐縮ですが、今回の特集で気になった点をいくつか指摘しておきます。26ページに「前年度の売り上げが赤字でも」と書かれています。売り上げが赤字になることはありません。「前年度の損益が赤字でも」などとすべきでしょう。
31ページにはジャパンネット銀行の融資に関して「貸し倒れを防ぐために高利率にならざるをえない」との記述があります。一般的には、高利率にしても貸し倒れを防ぐ効果は見込めません。返済すべき金額が増えるので、貸し倒れはむしろ起きやすくなると考えるべきです。筆者は「貸し倒れに備えて高利率にせざるをえない」と言いたかったのかもしれませんが、そうは書いていません。
【日経BP社からの回答】
お問い合わせいただきました件につきましては日経ビジネス編集部としての判断で、鹿毛様への回答は控えさせていただきます。
何卒、よろしくお願い申し上げます。
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問い合わせから5時間ほどで回答が届いた。何を問い合わせても「回答は控えさせていただきます」で済ませる方針が固まったのだろう。日経が「ほぼ無視」なのだから、日経ビジネスも歩調が合ってきたとも言える。上記の問い合わせを無視するメディアに明るい未来が開けているかどうかは、飯田展久編集長を含め編集部の人間にも理解できるはずだ。しかし、プライドが邪魔してメディアとして望ましい対応ができないのだろう。
残念ではあるが、足を踏み入れてはならない向こう側へ堕ちてしまった人たちを嘆いても仕方がない。まともな書き手を育てるためにも、今回の特集に関する指摘をさらに続けよう。
※(3)へ続く。
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