高良大社(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です |
【ダイヤモンドの記事】
11月上旬、大手小売りチェーンの一部店舗から、サントリービールの大型新商品「ザ・モルツ」がひっそりと消えた。
今年9月、サントリーはスタンダードビール市場への本格進出を宣言し、満を持して「ザ・モルツ」を投入。テレビCMには人気ダンスユニットの「EXILE TRIBE」を起用するなど、大量の広告投資と低価格攻勢でビール売り場を“ジャック”した。
ところが、発売当初こそコンビニエンスストアやスーパーマーケットの店頭をにぎわせたものの、11月以降「ザ・モルツ」の販売数量は急失速。「もう、ベンチマークする必要性はない。戦況は平常運転に戻った」とある競合メーカー幹部は言い切る。
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「今年9月、サントリーはスタンダードビール市場への本格進出を宣言し、満を持して『ザ・モルツ』を投入」と泉秀一記者は書いている。素直に解釈すれば、サントリーはスタンダードビールを実験的にしか手掛けていなかったが、9月から本格的に生産・販売するようになったのだろう。ただ、日経の6月23日の記事を読むと迷いが生じる。
【日経の記事】
サントリービールは23日、通常のビールを29年ぶりに全面刷新すると発表した。1986年から販売してきた「モルツ」を終了して、9月に新たに「ザ・モルツ」を売り出す。これまで高級ビールのザ・プレミアム・モルツと第三のビールの金麦に注力しており、通常のビールは手薄だったが、シェア拡大に向け攻めに出る。
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日経の記事が正しければ、「ザ・モルツ」は「モルツ」の後継商品に過ぎない。1986年から「モルツ」を売ってきたのであれば「スタンダードビール市場への本格進出」は言い過ぎだ。ひょっとすると、「ザ・モルツ」の前に「モルツ」があったことを泉記者は知らないのではないか。以下のくだりからはそう推測できる。
【ダイヤモンドの記事】
それだけではない。「実は、サントリーが抱える悩みはもっと深い」と同社幹部は漏らす。「スタンダードビール『ザ・モルツ』の失速が、虎の子の『ザ・プレミアム・モルツ』のブランドイメージを毀損するリスクがある」(同幹部)というのだ。
そもそも、既にプレミアム価格帯の商品を持ちながら、同ブランドでスタンダード価格帯の商品を後から投入するのは異例中の異例。「『ザ・モルツ』不調のイメージが、『プレモル』へ悪影響をもたらしかねない」と競合のマーケティング担当者も指摘する。
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「既にプレミアム価格帯の商品を持ちながら、同ブランドでスタンダード価格帯の商品を後から投入するのは異例中の異例」と泉記者が書いているのは奇妙だ。スタンダード価格帯の「モルツ」は1980年代からあったのだ。と言うより、スタンダード価格帯の「モルツ」が最初にあって、その後にプレミアム価格帯の「ザ・プレミアム・モルツ」を投入したのではないか。その辺りを考えると、泉記者が状況を正しく理解している可能性は低い。
最後に、言葉の使い方にも注文を付けておこう。泉記者は横文字を使い過ぎだ。「スタンダードビール」「スタンダード価格帯」を注釈なしに用いるのは感心しない。例えば「スタンダードビールと呼ばれる中級品」「中価格帯」とすれば、かなり分かりやすくなる。
「もう、ベンチマークする必要性はない」というコメントの「ベンチマーク」も使う必要は乏しい。コメントなのでどうしても「ベンチマーク」を使いたいと考えるならば、せめて訳語は入れてほしい。さらに言えば「“ジャック”した」も「“占拠”した」の方が伝わりやすい。
泉記者はほとんど意識せずに記事中で横文字を使っているのだろう。今からでも遅くない。必要最低限に抑える努力をしてほしい。それでも、かなりの横文字が記事には出てくるはずだ。
※記事の評価はD(問題あり)。暫定でDとしていた泉秀一記者への評価はDで確定とする。
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