【日経ビジネスの記事】
浜辺に建つマリゾン(福岡市早良区) ※写真と本文は無関係です |
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「消費者が青田売りを敬遠。新築から中古への大転換が起き始めた」という根拠を記事中に探すと上記のくだりぐらいしか見当たらない。しかし、「青田売りを敬遠する消費者が確実に増えている」と書いているだけで、具体的な数値は出てこない。横浜市の仲介業者のコメントにも「青田売りを敬遠する人が増えている」「中古に需要が大きくシフトしている」といった話は出てこない。
そもそも「杭のデータ改ざんで不信感を持った消費者が青田売りを敬遠。新築から中古への大転換が起き始めた」という流れは理屈としてはおかしい。データの改ざんは「完成前には分からないが、完成後にはすぐに見抜ける」という問題ではない。中古マンションを購入した後にデータの改ざんが発覚する可能性は十分にある。データの改ざんがあったからと言って、問題となった横浜のマンションのように建物の欠陥が目に見える形になるとは限らないからだ。
杭のデータ改ざんで「新築から中古へ」という流れが起きるならば、2005年の耐震偽装問題が起きた後にもそういう流れが起きるのが自然だ。しかし、記事では「新築偏重というこれまでの傾向」と書いているので、そうした変化はなかったのだろう。
明らかな欠陥が完成直後に顕在化するマンションが増えているのならば、「新築から中古へ」と流れるのも納得できる。しかし、今回はそういう話ではない。
既に述べたように、記事の冒頭では「新築から中古への大転換が起き始めた」と高らかに宣言していた。しかし、記事の結びは驚くべき内容になっている。「青田売りの弊害が明らかになったことで、消費者が新築にノーを突き付ければ、中古への大転換を引き起こすことになる」。これはひどい。やはり「大転換が起き始めた」わけではなかったようだ。大転換はあくまで「消費者が新築にノーを突き付ければ」との条件付きでの見通しらしい。冒頭での「宣言」を信じて読み進めた自らの愚かさを呪うしかない。
※記事の評価はD(問題あり)。島津翔記者、広岡延隆記者、林英樹記者の評価はいずれも暫定でDとする。なぜ今回のような完成度の低い記事に仕上がったのかは、デスクも一緒になって詳細に検討してほしい。
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