2015年9月9日水曜日

日経が無視した問い合わせ(11) 2015年8月

2015年4~8月に日経が無視した問い合わせは、今回までの計11回で一通り紹介できた。そして、9月に入ると日経が初めてまともな回答を届けてきた。回答の内容は不十分だが、それでも読者対応のレベルは一段上がったと言える。「日経が無視した問い合わせ」が(11)で終わることを祈りたい。

今回の「日経が無視した問い合わせ」は、芹川洋一論説委員長が朝刊1面に書いた記事に関するものが2件で、クアラルンプール支局の吉田渉記者関連が1件。いずれも決定的な問題ではないが、「このレベルの記事を1面に載せていて大丈夫か」とは思ってしまう。


◆「過去を変えるのは未来だ」(8月15日朝刊1面)について

【日経への問い合わせ~その1】
アムステルダム(オランダ)の運河 ※写真と本文は無関係です

記事中で芹川洋一論説委員長は「歴史摩擦の値はその関数で決まってきた」「戦後70年、摩擦の関数はおそらく最大値を示している」「これから摩擦関数の値を小さくしていくにはどうしたらいいのか」などと書かれています。しかし「摩擦関数」とは聞き慣れない言葉です。調べてみても、どういう数値なのか分かりませんでした。「摩擦関数」は「摩擦係数」の誤りではありませんか。これなら意味も明確です。「摩擦関数」で正しいとの判断であれば、その根拠を教えてください。


【日経への問い合わせ~その2】

記事では「日本経済が圧倒的に優位だった1980年代までは中韓両国とも協力をあおいだ。今や名目GDP(国内総生産)で中国に抜かれた。日本の比較優位は失われた」と書かれています。この「比較優位」の使い方は正しいのでしょうか。特定の財・サービスを生み出すための機会費用が中韓を下回る状況を指して「日本は中韓に対して比較優位がある」と考えるはずです。記事からは「名目GDPで中国に抜かれると、中国に対する比較優位を失ってしまう」と受け取れます。しかし、「名目GDPの総額で上回っていれば比較優位を保てる」といった関係はないはずです。経済学的な意味で「比較優位」を用いているわけではないとの可能性も考慮しましたが、無理があります。言葉の使い方として問題がないとの判断であれば、その根拠も教えてください。

※「日経の芹川洋一論説委員長は『裸の王様』?」参照。



◆「マネー異変 きしむ世界経済(3)~『宴』去り、新興国に三重苦」(8月27日朝刊1面)について

【日経への問い合わせ】

記事中で「原油先物相場は1バレル40ドル割れと歴史的な低水準に下落」と書かれています。この説明は不適切ではありませんか。2003年頃まで40ドルを下回る水準は常態化していました。1998年には10ドル近くまで下げたはずです。10ドルに接近してきたならともかく、40ドル割れで「歴史的な低水準」とするのは無理があります。「問題ない」との判断であれば、その根拠を教えてください。

※「原油40ドル割れは『歴史的な低水準』? 日経『マネー異変』」参照。

※状況次第で(12)へ続く。

0 件のコメント:

コメントを投稿