アムステルダム(オランダ)中心部 ※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
節約目的で注目され、普及しつつあるシェアリング(共有)ビジネス。効率よくぜいたくを楽しむ手段としても、利用者の裾野を広げている。
「シャネル」「エルメス」「グッチ」――。エス(広島市)が手掛けるブランドバッグのシェアリングサービス「ラクサス」の登録者は、今年2月のスタートから半年で4万人を超えた。
スマートフォン(スマホ)アプリで2000個のバッグから好きなモノを選び無期限で借りられる。児玉昇司社長は「初年度は1万件程度と思っていたのに」と驚く。
利用料金は月に6800円(税別)。年間8万円を超える。高級品も買えてしまう金額だが「気軽に次々お試しできるのが面白い」(主婦、32)、「新作を無期限で使えるのが最大の魅力」(会社員、35)という。
IT(情報技術)サービスのエアークローゼット(東京・港)が2月に始めた女性向け衣服のシェアサービスも登録者数が5万人を超えた。まず登録者はホームページで好みの服の写真や好きな色、挑戦したい色などを選択。これをプロのスタイリストが分析、好みと思われる服を3点選んで随時配送する。こちらも月額6800円(税別)。
エスもエアークローゼットも常識的に考えれば、やっているのは「レンタル」だ。これをシェアリングと呼ぶのであれば、レンタカーもシェアリングになってしまう。しかし、「カーシェアリング」はレンタカーとは別物として扱われている。「シェア」に絞ると記事の趣旨に合う事例がなかったのだろうし、「シェア」の範囲も曖昧ではある。だからと言って単なるレンタルまでシェアに含めてしまっては、記事に説得力は望めない。
以下の事例もかなり苦しい内容だ。
【日経の記事】
「割高でも他人とふれあえる場を」。不動産関連のグローバルエージェンツ(東京・渋谷)に、こんな若者からの申し込みが殺到している。
同社の「ソーシャルアパートメント」はワンルームマンションの部屋と大画面テレビ、バーカウンター、ソファなどを備えた豪華な共有スペースで構成する。いわばプライベートを完全に確保しつつ、住民と交流できるシェアハウスだ。
ソーシャルアパートメントの賃料は同水準のワンルームマンションに比べれば2割ほど高いが、年300~400戸の供給に対し、5千人から問い合わせがあるという。「広く、安く」というのが従来の賃貸住宅の常識だが「共有に価値を見いだしお金を払う若者が増えている」(山崎剛社長)。
記事で言う「ソーシャルアパートメント」を日経では「プライベートを完全に確保しつつ、住民と交流できるシェアハウス」と捉えているが、豪華な共有施設を備えたワンルームマンションと見なす方が自然だ。そもそもシェアハウスとは「複数の人が一戸建ての住居を借りて、台所・風呂・トイレなどを共同利用しているもの」だろう。ワンルームマンションとシェアハウスは両立しないはずだ。
それに、分譲マンションであれば、豪華なパーティールームなどを共有スペースとして用意している物件は珍しくない。記事では「『シェア』は節約にあらず」という見出しを立てて、新しいトレンドのように紹介しているが、分譲マンションも含めて考えると「節約ではないシェア」に新規性はない。
記事中の「若者からの申し込みが殺到している」という説明も引っかかる。「年300~400戸の供給に対し、5千人から問い合わせがある」らしいが、「問い合わせ=申し込み」ではないはずだ。問い合わせ件数としても、それほど多いとは思えない。「申し込みが殺到」と書くならば、入居申し込み件数を記事中で見せれば済む。なのに「問い合わせ件数」しか出していないところに怪しさを感じる。
※記事の評価はD(問題あり)。
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