2015年7月17日金曜日

記事の誤りを握りつぶす理由 日経の場合(1)

記事の誤りを握りつぶし続ける週刊ダイヤモンドについて色々と書く機会が多いが、握りつぶしで言うと日経の方が圧倒的に悪質だ。日経が正直にミスを認めていれば、訂正件数は軽く今の10倍以上になるだろう。ここでは、日経が記事の誤りをなぜ黙殺し続けるのかを分析し、何をどう変えるべきか提言する。

「説明としては明らかにおかしいが、日経が誤りを認めたり訂正を出したりは絶対にしないはずだ」と思える例をまず挙げよう。1年以上前の「私の履歴書~トム・ワトソン①」(2014年5月1日朝刊文化面)という記事に以下のような記述がある。


【日経の記事】
ブリュッセル(ベルギー)のアイスクリーム店 ※写真と本文は無関係です

(パットの)バックスイングでは左肩を下げ、打つ段階で右肩を上げる。すると、どうだろう。何もかもがうまくいくではないか。


右打ちの場合、「打つ段階で右肩を上げる」ではおかしい。「右肩が下がる」とすべきところを誤訳したのだろう。しかし、担当の編集委員は「誤訳ではない。バックスイングで上がった右肩を残す感じ、あるいは左の壁を作る感じを表現している」と弁明したらしい。これを無理のある説明だと思う者は社内にもたくさんいた。しかし、この弁明は社内で当然のように受け入れられ、日経は決して「説明に問題があった」とは認めない。もちろん訂正も出ない。

4月28日の日経朝刊消費Biz面の記事「外食売上高、3月4.6%減」では、販売が振るわなかった理由として「前年同月に比べ土曜日が2日少なかった」と堂々と書いている。土曜日が前年同月より2日減ることはあり得ない。しかし、これも「日経ならば記事の説明に問題ありとは認めないし、訂正も出さないだろう」と容易に予想できる。そして、実際にその通りになった。

「強引にでも弁明できる案件では、原則として強引な弁明で乗り切り、誤りは認めない」というのが日経の体質だ。そうなる理由としては(1)間違いかどうかの判断を記事の作り手側に委ねている (2)作り手のプライドが高い (3)訂正を出す「コスト」が高い--といったところだろう。 

これが行くところまでいくとどうなるか。2014年12月19日の夕刊文化面「シネマ万華鏡~ベイマックス」という記事では、強引に弁明しようとしても弁明できない案件まで握りつぶそうとした。映画「ベイマックス」を紹介するこの記事では、「大好きな兄が天才少年の弟タケシに遺したのは、兄の仇討ちには不向きな心優しい癒しロボットのベイマックスだった」と外部ライターが書いてしまった。正解は「天才少年の弟ヒロ」なので弁明の余地はない。しかし、文化部の担当デスクは黙殺を選んだ。

結局、その後に色々とあって1カ月ぐらい経ってから訂正記事を掲載した。しかし、小学生の女の子から間違い指摘を受けてもきちんと対応せず、だんまりを決め込もうとした時期があったのは事実だ。ここまで明確な固有名詞の誤りを握りつぶすのは、日経でも少数派だろう。しかし、中にはこのレベルの誤りまでうやむやにしようとする「猛者」がいる。それが日経だ。

こうした状況を知りながら、社長も含め日経の幹部はきちんとした対策を取ろうとはしない。そのことがよく分かる事例がある。

※(2)へ続く。

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