2015年6月17日水曜日

金は安全資産? 日経「プラチナ、長引く逆転相場」(1)

「記事の作り手は市場に関する理解が決定的に欠けているのではないか」と思える記事が17日の日経朝刊に出ていた。マーケット総合2面の「プラチナ、長引く逆転相場」 というアマタ記事は、ツッコミどころが多すぎる。経済紙で市場動向を扱う記事がこのレベルでは、ちょっと救いようがない。具体的に問題点を挙げていこう。

◎貴金属投資はそんなに安全?

アムステルダム(オランダ)の運河  ※写真と本文は無関係です
用語辞典で「安全資産」の意味を調べると、「資産から得られる収益を確実に予測することができる資産である。つまり、収益の金額、支払時点の双方ともに確実な資産である。無リスク資産とも呼ばれる」と出てくる。これに従えば、金もプラチナも当然、安全資産ではない。

しかし、記事では「安全資産といわれる金は安値圏で中央銀行の買い付けが相場を下支えする」「金をはじめとする貴金属は安全資産として投資される」と説明している。

貴金属がなぜ「安全資産」なのか記事中に説明はない。仮に「債券や株式と違って信用リスクがないから」と考えているとすれば、貴金属を含めコモディティーへの投資は全て「安全資産への投資」となる。しかし、「原油先物に思い切って資金を投じてみませんか。安全資産への投資なので安全ですよ」と言われて、納得できるだろうか。

貴金属への投資を促したい業界側からは、「金=安全資産」といった宣伝がメディアに対してもあるだろう。それを鵜呑みにしてはダメだ。「安全資産といわれる金」とどうしても書きたいのならば、「信用リスクがないという意味で安全資産といわれる金」などと説明してほしい。



◎金とプラチナの説明が…


この記事の金とプラチナに関する説明には、他にも疑問が残る。最初の段落で「産業素材の側面があるプラチナは消費地の欧州でギリシャ問題を背景にした将来的な需要減少が意識されて売られる。安全資産といわれる金は安値圏で中央銀行の買い付けが相場を下支えする」と書いている。

これを読むと「金には産業素材としての側面がないし、プラチナは安全資産ではない」と理解したくなる。しかし、それほど多くないとは言え、金にも産業用途はしっかりある。「安全資産」に関しても、記事を読み進めると「金をはじめとする貴金属は安全資産として投資される」と出てくるので、「だったら、プラチナは安全資産ではないかのような最初の説明は何だったのか」と混乱してしまう。


◎「割高」の意味分かってる?

記事の冒頭で「貴金属市場で金とプラチナの値動きに差が出ている。本来、割高なはずのプラチナの値下がりが激しく、金を下回る逆転相場が年初から続く」と書いている。記者は「割高」の意味を理解していないのだろう。「割高」とは「品質や分量に対して価格が高い」という意味だ。しかし、プラチナは金より「割高」なのが常態ではない。記事では「1トロイオンス当たりの価格は通常ならばプラチナの方が金より高い」と伝えたかったのだろうが、うまく説明できていない。

ついでに言うと、プラチナに関して「値下がりが激しく」と解説しているのも気になった。記事によると、プラチナの年初からの下落率は「9%」。これで「値下がりが激しく」と書くのは苦しい。明確な基準はないが、期間が半年ならば下落率として30%以上は欲しい気がする。


※(2)で引き続き記事の問題点を指摘していく。

(つづく)

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