2015年4月17日金曜日

WTIが全体で買い越し?日経「原油価格 底入れ観測」

相場が上昇している時に「市場全体が買い越しになっている」と言われると何となく納得してしまいそうになる。しかし、もちろん明らかな誤りだ。売買が成立する場合、売りと買いの数量は常に同数となる。それを踏まえると、16日付の日経朝刊に出ていた「原油価格 底入れ観測」(総合1面)という記事は問題ありと言える。記事では以下のように説明している。


【日経の記事】
ナミュール(ベルギー)市街 ※写真と本文は無関係です

イランと米欧など6カ国はイランの核開発計画を縮小する枠組みで合意した。しかし6月末を目指す最終合意まで曲折が予想され、制裁が解除され原油輸出が拡大するのは来年以降にずれ込む公算が大きい。値上がりを見込んだ投資ファンドなどの買いが活発で、WTIの買越残高は2週連続で増え7日時点で25万枚(1枚1千バレル)を超えた。


「WTIの買越残高は2週連続で増え7日時点で25万枚(1枚1千バレル)を超えた」と書いてあると「WTIは全体として買い越しが続いているんだな」との印象を与えてしまう。「ファンドなど非商業部門の買越残高が2週連続で25万枚を超えた」といった書き方をすべきだ。市場全体が買い越しだと筆者が誤解しているのであれば、知識不足がひどい。ちゃんと分かっていたとすれば、説明が下手すぎる。下手な説明はこれに留まらない。


【日経の記事】
米国では夏場のドライブシーズンを控え、製油所の稼働率も上がっている。原油需要は日量で50万バレル増えるとの見方もあある。市況の底入れ観測が広がり「WTIは60ドルを目指す展開となるだろう」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之・主席エコノミスト)との指摘が出ている。

※「見方もあある」は記事のまま。


まず「原油需要は日量で50万バレル増えるとの見方もある」と言われても、いつといつを比べているのか判然としない。現在と夏場の比較かもしれないが、断定できる材料は見当たらない。それに「50万バレル」が多いのか少ないのか一般の読者は判断できないだろう。50万バレルが全体の何%を示すのかは明示すべきだ。そもそも、季節的な要因だけで需要が増えるのであれば、相場動向を占う材料として、それほど大きな意味はない。


色々な意味で雑な書き方が目立つ。記事の評価はDとする。

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