日本経済新聞の企業ニュースに「when」が抜けるのは悪しき伝統。26日の夕刊1面に載った「イーレックス、バイオマス発電燃料をベトナムで量産」という記事もその一例だが、やり方が巧妙になっている気がする。記事の全文を見た上で「量産」開始時期について考えてみたい。
宮島 |
【日経の記事】
電力小売り大手のイーレックスはバイオマス発電用燃料をベトナムで量産する。イネ科の植物「ソルガム」の商業栽培に着手し、2024年度には収穫量を年30万トンまで増やす。発電量に換算して約1億5000万キロワット時と、一般家庭3万5000世帯分の年間需要をまかなえる。加工して日本に運び、自社の発電所などで使う。木材からつくる燃料よりコストを抑え、低炭素電源の原価低減につなげる。
まず南部ロンアン省など4カ所で農場を運営し、燃料用品種を育てる。ソルガムは3カ月で高さ6メートルほどに成長する。24年度には栽培面積を約15平方キロメートルと、現状の2.5倍に増やす予定だ。ソルガムは乾燥に強い一年草で、生育が早く年3回ほど収穫できる。ベトナム国内の生産委託先の工場などで葉や茎を粒状の燃料「ペレット」に加工し、日本に輸出する。
ペレットは22年度中にも運営する糸魚川発電所(新潟県糸魚川市)で石炭と混ぜて燃やし始める。バイオマス発電の燃料は木材からつくる木質ペレットが一般的だが、より安価な燃料を自社生産してコストを抑える。今後は他の発電会社にも外販する方針で、将来はベトナム国内での販売も視野に入れる。23年度にソルガムの事業規模を10億円に増やす。
バイオマス燃料は草木の生育過程で光合成により二酸化炭素(CO2)を吸収するため、火力発電の環境負荷を減らせる。木質ペレット原料となるアカシアやユーカリは、植樹から伐採まで早くとも4~5年程度かかる。ソルガムは同じ栽培面積から得られる熱量がアカシアなどの約5倍と、効率が高い。
◎実はもう「量産」開始済み?
「イーレックスはバイオマス発電用燃料をベトナムで量産する。イネ科の植物『ソルガム』の商業栽培に着手し、2024年度には収穫量を年30万トンまで増やす」と書いてあると、断定はできないものの「量産」開始は「2024年度」なのかなと感じる。
しかし読み進めると「24年度には栽培面積を約15平方キロメートルと、現状の2.5倍に増やす予定だ」と出てくる。つまり「現状」の「栽培面積」は6平方キロメートル。「収穫量」も連動すると考えると「現状」でも年間12万トンもの「ソルガム」を作っている計算になる。であれば既に「量産」は始まっていると見るのが自然だ。
それを裏付けるように「ペレットは22年度中にも運営する糸魚川発電所で石炭と混ぜて燃やし始める」とも記している。
これをどう理解すればいいのか。
おそらく「量産」は始まっている。「量産を始めた」と過去形にすると夕刊とはいえ1面には厳しいといった判断があったのかもしれない。そこで「量産する」と将来の話のように見せたのではないか。「量産開始時期に触れてない」と言われないために「2024年度には収穫量を年30万トンまで増やす」と「2024年度」を直後に持っていく。しかし「量産開始時期=2024年度」とは言い切らない。
この推測が当たっているのならば悪い意味でテクニックは身に付いている。だが、この手の記事を世に送り出していては読者からの信頼は得られないだろう。
※今回取り上げた記事「イーレックス、バイオマス発電燃料をベトナムで量産」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20221226&ng=DGKKZO67147560W2A221C2MM0000
※記事の評価はD(問題あり)
酷いね。ニュースじゃなくて、オールドだよ。日本経済古文に社名変更を提案します。
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