日経ビジネス11月7日号に三田敬大記者が書いた「日銀、急激な円安が問う金融緩和10年の功罪~漂流する中銀の『独立』」という記事は期待外れだった。「急激な円安が問う金融緩和10年の功罪」をきちんと論じているとは思えない。記事の終盤を見てみよう。
宮島 |
【日経ビジネスの記事】
異次元の金融緩和10年。この間の日銀をいかに総括すればよいか。金融政策の評価は難しい。自然科学と異なり「別の選択肢を実施していたらどうなっていたか」という再現性検証が事実上不可能だからだ。緩和継続を優先する人は「もうすぐ効果が出る」と言い続け、修正派は「実験期間は十分過ぎた。副作用に配慮して自由度を高めるべきだ」と主張する。専門家も間違える。「高いインフレを目指して緩和を継続すべし」と90年代に唱えた米経済学者のポール・クルーグマン氏は、2015年には「一定の条件下では緩和は効かない」と宗旨変えした。
一つ確実に言えるのは、金融政策の効果は非常に大きいものの、過剰な期待はできない、という当然のことが改めて示されたこと。個人が消費意欲を高め、企業がもうかるビジネスを生み出し、政府が効率的な支出を行うには、各主体の創意工夫・努力が必要ということは間違いない。
日銀法改正から四半世紀がたった。米中冷戦やグローバルなインフレなど、世界経済の状況が激変する中で、日銀は独立した金融政策の専門家集団として、日本のためにどう力を発揮すべきなのか。その意義が今ほど問われている時はない。
◎肝心なところが…
まず、この記事には「功」が見当たらない。「功」はなかったと三田記者が見るのならば、そう書いてほしい。「金融政策の効果は非常に大きい」とは言い切ってしまうが、その根拠は示さない。「非常に大きい」と確信できるのならば、どの程度の大きさなのかは読者に見せるべきだ。
「金融政策」に「過剰な期待はできない」のは当たり前。どの程度の「期待」ができるのか三田記者の考えが知りたかった。
「罪」に関しても物足りない。全体を見渡しても「長期にわたる低金利は金融機関の収益低下や資産運用環境の悪化、国債市場の機能低下などの副作用を招いた。間接的に政府の拡張財政を支えているとの批判もある」と書いている程度。
「マイナス金利、国債や上場投資信託(ETF)の大量購入、イールドカーブ・コントロール──。非伝統的な金融政策を果敢に繰り出す日銀」をどう評価するのか。そこは論じてほしかった。
結局は「米中冷戦やグローバルなインフレなど、世界経済の状況が激変する中で、日銀は独立した金融政策の専門家集団として、日本のためにどう力を発揮すべきなのか。その意義が今ほど問われている時はない」と日経の社説のような締め方をしてしまう。
「急激な円安が問う金融緩和10年の功罪」をきちんと検証しようとする姿勢は最後まで見えなかった。
※今回取り上げた記事「日銀、急激な円安が問う金融緩和10年の功罪~漂流する中銀の『独立』」
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00117/00231/
※記事の評価はD(問題あり)。三田敬大記者への評価も暫定でDとする。
日本銀行法、第二条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。・・これを読まずに記事を書く人の勇気を称えたい。物価の安定とはっきり書いているが全く触れていない。
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