2022年9月26日月曜日

原発問題で逃げの姿勢が目立つ日経のエネルギー・環境問題「緊急提言」

多くの人手と時間は使ったのだろう。しかし結果は当り障りのない具体性の乏しい「緊急提言」になってしまった。

錦帯橋

26日の日本経済新聞朝刊1面に載った「原発、国主導で再構築を 再生エネ7割目標に~エネルギー・環境、日経緊急提言 『移行期』の安定と脱炭素両立」という記事(関連記事も含む)は残念な内容だった。1面と社説、さらに特集2ページを使ってこの中身では辛い。

緊急提言」の肝は「原発、国主導で再構築を」。つまり「国がしっかり考えてね」という話。「提言は論説委員会と編集局が検討チームをつくり、専門家らと議論を重ねてまとめた」らしいが、その結果がこれでは浮かばれない。

特に「原発」では肝心の問題に日経としての答えを出していない。そこから逃げて何のための「緊急提言」なのか。特集面の「原子力:安全性・信頼性・透明性の確保を前提に」という記事を見ながら問題点を指摘したい。


【日経の記事】

ウクライナで原発周辺が攻撃対象となり、外部電源喪失への懸念が生じたことは看過できない。規制当局と事業者が協力して、海外事例も参考に最適な防護策を検討し、放射性物質の拡散が起きないよう、できうる限りの対策を実施する必要がある。


◎結局、具体策はなし?

原発問題の肝の1つが安全保障。「ウクライナで原発周辺が攻撃対象となり、外部電源喪失への懸念が生じたことは看過できない」のはその通り。原発は攻撃対象となれば重大事故につながりやすく安全保障上の大きな弱点となる。敵に占拠された場合は反撃が難しいという問題もある。「ウクライナ」はそのことを改めて認識させてくれた。

そこで日経はどう考えるのか。出した答えは「規制当局と事業者が協力して、海外事例も参考に最適な防護策を検討し、放射性物質の拡散が起きないよう、できうる限りの対策を実施する必要がある」。つまり「規制当局と事業者が協力して」しっかり「対策を実施」してねとお願いしているだけ。具体策はゼロ。難しい問題だから逃げたのだろう。

この問題で具体策を打ち出せる力が自分たちにないと思うのならば「緊急提言」を出そうなどとは考えないことだ。

もう1つの肝である高レベル放射性廃棄物の処分問題も日経として答えを出す力はないようだ。「原発事業の形態、損害賠償の見直しに加え、核燃料サイクルのあり方、バックエンドの問題なども公開の場で議論の俎上(そじょう)に載せるのがよい」「使用済み核燃料の再処理と地層処分、廃炉などバックエンドにも国に積極的な関与を求める。処分地決定には期限を設け、新増設とセットで計画を進める」としか記していない。

公開の場で議論」した後で「」が「積極的」に「関与」して何とかしてねというレベルの話だ。「処分地決定には期限を設け」るべきと考えるならば、せめてその「期限」だけでも具体的に提言してほしかった。

結局「原発はしっかり活用すべきだが高レベル放射性廃棄物の処理問題とか安全保障の問題とか厄介なことは国や事業者に頑張って考えてもらおう」というのが日経の考えだろう。

今回の「緊急提言」を読み解くとそうなる。



※今回取り上げた記事「原子力:安全性・信頼性・透明性の確保を前提に

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220926&ng=DGKKZO64596710U2A920C2M12500


※記事の評価はD(問題あり)

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