2022年7月5日火曜日

筋の悪さが目立つ日経「電通G、メタバース運営に本格参入」

いつものことだが日本経済新聞で「本格参入」の文字を見つけたら要注意だ。5日朝刊のビジネス・テック面に載った「電通G、メタバース運営に本格参入~世界で仮想イベント」もニュースとしての価値はほぼ感じられない。全文を見た上で問題点を指摘したい。

耳納連山と夕陽

【日経の記事】

電通グループは企業がイベントでメタバースを活用するサービスを本格的に始める。メタバース関連の技術を持つスタートアップのambr(アンバー、東京・中野)に追加出資した。ambrに開発資金を提供し、急拡大するメタバース需要を取り込む。

ambrには2021年に出資していた。追加出資額は非公表。ambrのメタバース構築基盤「xambr(クロスアンバー)」を活用し、電通グループのネットワークで国内外で顧客企業に仮想イベント事業などを売り込んでいく。マーケティング予算が多く確保できる企業や、ブランド価値の向上をしたい企業の需要を狙う。

メタバース空間で掲出する3次元(3D)広告も開発する。メタバース空間で消費者が利用する移動手段などを3Dで作り、空間内で広告配信するなどの検討をしている。

電通グループは「東京ゲームショウ2021 オンライン」でメタバース空間の構築やイベントを手掛けるなど、仮想現実(VR)関連の技術や事業運営のノウハウを蓄積してきた。

東京ゲームショウでは、漫画やアニメといったコンテンツ資産を持つゲーム会社や出版社などと協力し、IP(知的財産)をメタバースで活用する手法を模索した。

電通グループは5月に国内のグループ横断でメタバース事業の拡大を推進する組織を発足させている


◎気持ちは分かるが…

記者の立場になって推測してみたい。

出発点は「電通グループ」が「ambrに追加出資した」ことだろう。これを知った記者が記事にできないかと考えた。ところが「追加出資額は非公表」でニュースとしての価値はほぼない。そこで「電通グループは企業がイベントでメタバースを活用するサービスを本格的に始める」という話に仕立てたのだろう。

本当に「サービスを本格的に始める」のならば、記事にするなとは言わない。ただ「サービスを本格的に始める」時期にすら触れていない。

しかも「電通グループは5月に国内のグループ横断でメタバース事業の拡大を推進する組織を発足させている」らしい。だとしたら、この時点で「本格参入」したと見るのが自然だ。「東京ゲームショウ」で「メタバース空間の構築やイベントを手掛け」た実績もある。

サービスを本格的に始める」という話を柱にするのならば「これまでは本格的ではなかった」「今後に本格的になる」と読者に示す必要がある。そのどちらもできていない。

本格参入」記事は基本的に書かない方がいい。記者として悪い方向への進化を促してしまう。気を付けたい。


※今回取り上げた記事「電通G、メタバース運営に本格参入~世界で仮想イベント

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220705&ng=DGKKZO62310860U2A700C2TEB000


※記事の評価はD(問題あり)

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