異次元緩和をそんなに前向きに評価していたのか。28日の日本経済新聞朝刊オピニオン面に梶原誠氏(本社コメンテーター)が書いた「Deep Insight~企業は安倍氏に応えたか」という記事を読んで少し驚いた。当該部分を見ていこう。
室見川 |
【日経の記事】
アベノミクス、とりわけ異次元緩和の評価は、指南役の浜田宏一・エール大名誉教授が訃報を受けて語った「国民生活を明るくした」に尽きる。首をかしげる人には聞いてみたい。「日経平均株価が8000円台のままでも良かったのか」と。誰もやる気が起きなかっただろう。
◎株高なら何でもOK?
自分は「首をかしげる人」だ。「日経平均株価が8000円台のままでも良かったのか」と梶原氏は問うているので答えてみたい。
「異次元緩和がなければ『日経平均株価が8000円台のまま』だとして、それはそれで良い。株価を上げるための強引な金融緩和は必要ないし、特にETF購入で市場に直接介入したのは罪が重い」
梶原氏は日銀のETF購入に全く触れていないが「株高のためなら何でもあり」との考えなのか。
「誰もやる気が起きなかっただろう」にも同意しない。少なくとも自分は株安だから「やる気が起きなかった」という経験がない。株価に関心がない人も日本にはたくさんいるはずだ。なぜ、そういう人たちも含めて「誰もやる気が起きなかっただろう」と見たのか。
さらに気になるのが梶原氏本人だ。今も「日経平均株価が8000円台のまま」ならば「やる気」のない状態で記事を書いていたということか。感心しない。
他のところにもツッコミを入れておきたい。
【日経の記事】
ならばなぜ、日本は9年後の今になってもデフレを脱却せず利上げもできないのか。「企業がアベノミクスに呼応して成長しなかったから」。こう仮説を立てると多くのことが分かりやすくなる。
◎利上げできるのでは?
「日本は9年後の今になってもデフレを脱却せず利上げもできないのか」と梶原氏は問う。自分から見ると既に「デフレを脱却」しているし「利上げ」の環境も整っている。日銀が嫌がっているだけだ。
「企業がアベノミクスに呼応して成長しなかったから」などと異次元緩和を擁護する気が知れない。5月15日の日経の記事では「東証プライム企業、4年ぶり最高益」と伝えている。「成長しなかった」のに「最高益」とは不思議な話だ。
結論部分にも注文を付けたい。
【日経の記事】
企業は今、リスクを取った安倍氏に応えたのかと問い直すべきだ。好機は永遠ではない。マネーが暴れると、世界の表舞台に戻るシナリオはもっと遠ざかる。
◎日本は「表舞台」にいない?
「世界の表舞台に戻るシナリオはもっと遠ざかる」と書いているので、日本は「世界の表舞台」にはいないと梶原氏は認識しているのだろう。GDP世界3位の日本が「表舞台」にいないとすると米中以外は全て裏に回っているのか。
「マネーが暴れると」という条件もよく分からない。「マネーが暴れると」日本企業だけ条件が悪くなるのか。ちょっと考えにくい。
ちなみに2年前のこのコラムで梶原氏は以下のように記していた。
「コロナで経営環境が一変し、世界の企業がビジネスモデルを変えざるを得ない今は、『失われた30年』で開いた世界との差を埋める最後のチャンスに違いない」
2年経っても「世界の表舞台」にいない日本は「最後のチャンス」を逃した?
それとも「最後のチャンス」がダラダラと続いている?
そこが知りたい。
※今回取り上げた記事「Deep Insight~企業は安倍氏に応えたか」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220728&ng=DGKKZO62942260X20C22A7TCR000
※記事の評価はD(問題あり)。梶原誠氏への評価はE(大いに問題あり)を据え置く。梶原氏については以下の投稿も参照してほしい。
「外国人投資家は日本株をほぼ売り尽くした」と日経 梶原誠氏は言うが…https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/09/blog-post_16.html
日経 梶原誠編集委員に感じる限界
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_14.html
読む方も辛い 日経 梶原誠編集委員の「一目均衡」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post.html
日経 梶原誠編集委員の「一目均衡」に見えるご都合主義
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_17.html
ネタに困って自己複製に走る日経 梶原誠編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_18.html
似た中身で3回?日経 梶原誠編集委員に残る流用疑惑
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_19.html
勝者なのに「善戦」? 日経 梶原誠編集委員「内向く世界」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_26.html
国防費は「歳入」の一部? 日経 梶原誠編集委員の誤り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/blog-post_23.html
「時価総額のGDP比」巡る日経 梶原誠氏の勘違い
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/gdp.html
日経 梶原誠氏「グローバル・ファーストへ」の問題点
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/blog-post_64.html
「米国は中国を弱小国と見ていた」と日経 梶原誠氏は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_67.html
日経 梶原誠氏「ロス米商務長官の今と昔」に感じる無意味
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/04/blog-post.html
ツッコミどころ多い日経 梶原誠氏の「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/deep-insight.html
低い韓国債利回りを日経 梶原誠氏は「謎」と言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_8.html
「地域独占」の銀行がある? 日経 梶原誠氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_18.html
日経 梶原誠氏「日本はジャンク債ゼロ」と訴える意味ある?
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_25.html
「バブル崩壊後の最高値27年ぶり更新」と誤った日経 梶原誠氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/27.html
地銀は「無理な投資」でまだ失敗してない? 日経 梶原誠氏の誤解
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/blog-post_56.html
「日産・ルノーの少数株主が納得」? 日経 梶原誠氏の奇妙な解説
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_13.html
「霞が関とのしがらみ」は東京限定? 日経 梶原誠氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/deep-insight.html
「儒教資本主義のワナ」が強引すぎる日経 梶原誠氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/deep-insight_19.html
梶原誠氏による最終回も問題あり 日経1面連載「コロナ危機との戦い」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/03/1.html
色々と気になる日経 梶原誠氏「Deep Insight~起業家・北里柴三郎に学ぶ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/04/deep-insight.html
「投資の常識」が分かってない? 日経 梶原誠氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/04/deep-insight_16.html
「気象予測の力」で「投資家として大暴れできる」と日経 梶原誠氏は言うが…https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/07/blog-post_16.html
「世界がスルーした東京市場のマヒ」に無理がある日経 梶原誠氏「Deep Insight」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/deep-insight.html
「世界との差を埋める最後のチャンス」に根拠欠く日経 梶原誠氏「Deep Insight」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/11/deep-insight.html
「日経平均3万円の条件」に具体性欠く日経 梶原誠氏「コメンテーターが読む2021」https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/01/3-2021.html
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