5日の日本経済新聞朝刊 総合・政治面に載った「スマホOS寡占に対処を」という社説は「要らない社説」の典型だ。全文を見た上で問題点を指摘したい。
三連水車 |
【日経の社説】
米アップルとグーグルによる2社寡占の弊害に切り込む契機になるのだろうか。政府のデジタル市場競争会議がモバイルネット市場について中間報告をまとめ、健全な競争環境を確保するために政府がより積極的な役割を果たすべきだとの考え方を打ち出した。
欧州連合もデジタル市場の寡占について、新法の制定による事前規制の強化に乗り出した。寡占の弊害を抑えつつ、規制対象の企業を含めて開発サイドのイノベーションへの意欲を十分に引き出す。そんな賢い規制をどう設計するか、政府の知恵が問われる。
端末やアプリの進化に伴い、スマートフォンの果たす役割は検索や買い物から動画視聴、金融取引まで年々広がり、今では生活や仕事に欠かせない存在になった。
ただスマホの基本ソフト(OS)はアップルの「iOS」とグーグルの「アンドロイド」の寡占が続いている。両社はスマホの基盤であるOSを握ることで、アプリの開発・配信や課金について自社に有利な運営が可能になっており、競争環境をゆがめる恐れがあるというのが報告書の認識だ。
例えば、アプリの開発をめぐってアップルと独立系の企業が競う場合に、OSの更新情報を社内で共有できるアップルが断然有利で、独立系が後れを取った例が紹介されている。報告書は公正競争が損なわれかねない数々の場面を当事者の証言などをもとに具体的に描き出しており、迫力がある。
もともとデジタル市場は利用者が増えるほど利便性が高まる「ネットワーク効果」が働きやすく、いちど寡占化すると、市場の力で是正するのは難しい。画面の小さいスマホは操作性に欠け、最初に設定されたアプリを使い続けることが多く、2社の優位がさらに際立つとも指摘した。
政府は今後各方面から意見を募り、具体的な規制手法を検討する方針だ。報告書に反発する2社の言い分も踏まえたうえで、実効性が高く、副作用の小さい規制の導入を急ぐべきだ。
◎何のための社説?
「政府のデジタル市場競争会議」がまとめた「中間報告」に関する解説記事ならば、この内容でもいいだろう。しかし社説だ。「しっかり議論して上手いことやってね」的なお願いをするだけなら意味がない。しかし日経ではこの手の社説が後を絶たない。
今回も「寡占の弊害を抑えつつ、規制対象の企業を含めて開発サイドのイノベーションへの意欲を十分に引き出す。そんな賢い規制をどう設計するか、政府の知恵が問われる」と書くだけで自ら「知恵」を出そうとはしない。
そして「報告書に反発する2社の言い分も踏まえたうえで、実効性が高く、副作用の小さい規制の導入を急ぐべきだ」と結んでいる。どんな「規制」にすれば「実効性が高く、副作用の小さい」ものになるのか日経として考えた形跡すらない。
これが自分たちの限界と感じるのならば社説は廃止でいい。
何のための社説なのか。論説委員の存在意義は何なのか。改めて自問してほしい。
※今回取り上げた社説「スマホOS寡占に対処を」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220505&ng=DGKKZO60521830V00C22A5PE8000
※社説の評価はD(問題あり)
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