日経ビジネス5月16日号の特集「絶望物価~負のスパイラルが始まった」は興味深い中身ではあるが、整合性に問題を感じる記述もあった。以下の内容で問い合わせしている。
耳納連山から見た夕陽 |
【日経ビジネスへの問い合わせ】
日経ビジネス編集部 岡田達也様 藤中潤様 酒井大輔様
5月16日号の特集「絶望物価~負のスパイラルが始まった」についてお尋ねします。問題としたいのは以下の記述です。
「日本経済は90年以降の、失われた20年、30年の低成長期に、消費者物価指数の底ばいが当たり前の『ゼロインフレ社会』になった」(PART1)
「(日本経済は)バブル崩壊とともに『失われた30年』を歩むことになる。景気が悪化し、消費は低迷。給料は上がらず、値下げしないと物が売れない悪循環『デフレスパイラル』に陥った。デフレが当たり前になってしまった日本にとって、物価が上がり続けることに対する免疫は薄い」(PART4)
どちらも「失われた30年」の物価動向を振り返った記述ですが整合しません。PART1では「消費者物価指数の底ばいが当たり前の『ゼロインフレ社会』」と見ているのに対しPART4では「デフレスパイラル」「デフレが当たり前になってしまった」と説明しています。
個人的にはPART1の説明が適切だと思えます。PART1に付けたグラフでも分かるように「消費者物価指数」がプラスの年もかなりあります。グラフに出てこない2007年までを含めても「デフレスパイラル」「デフレが当たり前になってしまった」と見るのは無理があります。
この2つの説明は矛盾していませんか。「デフレが当たり前」と「消費者物価指数の底ばいが当たり前」のどちらを信じれば良いのでしょうか。
筆者が異なるためこうした結果になったのだと思うのですが、記事を擦り合わせて全体の整合性を整えるという作業はやっているのでしょうか。
せっかくの機会なので、もう1点指摘しておきます。
見出しで「負のスパイラルが始まった」と打ち出し「跳ね上がる原材料やエネルギー価格でメーカーの採算は悪化し、家計も苦しむ。それでもデフレの長期停滞で下がったままの賃金は上がらない」と説明しています。
これでは「負のスパイラル」になりません。「賃金が上がらない」→「原材料・エネルギー価格がさらに上がる」という因果関係が成立しないからです。賃金が上がらないことは、むしろインフレ抑制要因です。
例えば「プロ野球チームの成績が落ちる→観客動員が減り球団収入が減る→選手の年俸総額を削る→補強が進まずチーム力が低下する→チームの成績がさらに落ちる→……」と連鎖するのが「負のスパイラル」ではありませんか。
問い合わせは以上です。PART1とPART4の説明の食い違いについては回答をお願いします。
お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いします。
◇ ◇ ◇
※今回取り上げた特集「絶望物価~負のスパイラルが始まった」https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/01100/
※特集への評価は回答を見てから考えたい。
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