2022年1月8日土曜日

日経 小竹洋之編集委員の「オピニオン」が見えない「Deep Insight~草の根監視社会に映る分断」

日本経済新聞の小竹洋之氏は「編集委員」だ。読者から見ると、何かご利益がありそうな肩書にも見える。そして8日の朝刊に小竹氏が書いた「Deep Insight~草の根監視社会に映る分断」という記事が載っているのはオピニオン面。「筆者が明確な意見を述べてくれるのだろう」と期待したくなる。しかし、今回の記事はそうなっていない。

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米国ではいま『ニュー・ピューリタン(新清教徒)』という言葉が広がる。人種や性などの差別を是正するため、標的のキャンセル(消去)も辞さない人々である」と述べた上で米国での「草の根監視社会」の現状をあれこれ書いて話は進む。しかし、これに対して小竹氏がどんな主張を持っているのかは明らかにならない。そして記事は以下のように終わる。

【日経の記事】

他者に寛容でありたいと望むが故に、それを押しつけて不寛容になるという「寛容のパラドックス(逆説)」。民主主義国家の草の根の監視社会には、権威主義国家とはまた違う息苦しさが漂う。


◎それだけ?

民主主義国家の草の根の監視社会には、権威主義国家とはまた違う息苦しさが漂う」というのが、この問題に関して小竹氏が出した最終的な結論なのか。「困ったもんだね」程度の話しかしていない。

その「息苦しさ」にどう対処すべきなのか。そこを論じてほしかった。今回の記事では米国の話に終始していたので、日本の現状に関しても触れた上で小竹氏の描くあるべき「社会」の姿を読者に示すべきだ。

小竹氏の参考になるように自分の意見を少し述べてみたい。

記事の中には「優先すべきは『社会の正義』か、それとも『言論の自由』か」というくだりがある。「言論の自由」を守ることも「社会の正義」の一部と言えるので、この設問自体に問題を感じる。これを「発言の適切さ」か「言論の自由」かという問題に置き換えた場合、個人的には「言論の自由」を重視したい。

今回の記事には以下の記述もある。

【日経の記事】

米教育人権団体FIREのデータベースによると、人種や性などにからむ言動が問題となった学者は2015年以降で505人。大学が講演に招いた政治家や有識者らに抗議の声が上がったのは、00年以降で497件にのぼる。およそ6割が左派、3割が右派からの圧力を受けていた。

明白な差別で処分されてしかるべきケースもあれば、責任を問われるのが酷なケースもある。ではアボット氏の場合はどうか。ナチスを想起させる表現は軽率だったとはいえ、本来の講演テーマとは無関係の持論を理由に発言の機会を奪うのはおかしいと、米政治学者のヤシャ・モンク氏はいう。


◎「明白な差別」は処分されるべき?

言論の自由」を重視する立場で言えば「明白な差別で処分され」るのも好ましくない。例えば「在日韓国人は日本から出ていけ」という発言は明らかに差別的で不適切だと感じるが、この発言を理由に何らかの「処分」を下すのは好ましくない。

明白な差別」も人によって異なる。例えば国会議員の3割を女性に割り当てるクオータ制は導入されれば男性への「明白な差別」だが、だからと言ってクオータ制導入論者を「処分」すべきなのか。導入論者の多くは「明白な差別」には当たらないと訴えるだろう。

脅迫、名誉棄損、風説の流布などに関しては「言論の自由」の制限がやむを得ない面もあるが、最小限に留めたい。

その代わりに「抗議の声」は、これまたできるだけ自由を確保したい。結果として罵詈雑言の応酬となるような事例も出てくるだろう。それでも、言いたいことも言えない「息苦しさ」を抱える社会よりはいい。

小竹氏はどう感じるだろうか。同意してくれとは言わない。自分の色をしっかり出してコラムを書こう。それが難しいのならば、後進に道を譲ることも考えるべき時期だ。


※今回取り上げた記事「Deep Insight~草の根監視社会に映る分断」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220108&ng=DGKKZO79043760X00C22A1TCR000


※記事の評価はD(問題あり)。小竹洋之編集委員への評価はDを据え置く。小竹編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

色々と問題目立つ日経 小竹洋之論説委員の「中外時評」https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/blog-post_14.html

「『大きな中央銀行』でいいのか」と問うた日経 小竹洋之上級論説委員に注文https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/06/blog-post.html

日経 小竹洋之編集委員は「コロナ世代」対策の具体論を語れhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2021/07/blog-post_13.html

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