31日の日本経済新聞朝刊国際面に羽田野生記者が書いた「『27年までに台湾武力統一』 中国、米上回る軍事力~タカ派中国人民大の金燦栄教授 米軍介入の有無焦点に」という記事は興味深い内容だった。台湾有事の問題を考える上で参考になる。本社コメンテーターの肩書で米中関係を論じている秋田浩之氏も、この記事を読んだ上で自らの立ち位置を明確にしてもらいたい。
筑後川と恵蘇宿橋と夕陽 |
記事の一部を見ていこう。
【日経の記事】
米中関係を専門とする中国人民大学の金燦栄教授は日本経済新聞の取材で、習近平(シー・ジンピン)指導部が2027年までに台湾の武力統一に動くとの見方を示した。台湾有事では中国人民解放軍がすでに米軍を上回る戦力を保持していると指摘した。
金氏は習指導部の外交政策に助言する学者の一人とされる。タカ派の論客としても知られ、インターネットを中心に活発に発信している。
習指導部は台湾統一を目標に掲げるが、時期は示していない。金氏は「22年秋の共産党大会が終われば、武力統一のシナリオが現実味を増す。解放軍の建軍から100年となる27年までに武力統一に動く可能性は非常に高い」と強調した。
米インド太平洋軍のデービッドソン前司令官も21年3月、米上院軍事委員会で「6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」と述べた。
台湾有事では米軍が介入するかどうかが一つの焦点となる。金氏は「中国は1週間以内に台湾を武力統一できる能力をすでに有している」と主張し、「解放軍は海岸線から1000カイリ(約1800キロメートル)以内ならば、相手が米軍であっても打ち負かせる」と説いた。
解放軍は中国近海に米軍艦艇を寄せつけない戦略をとっており、中国近海での対米国のミサイル攻撃力を磨いていることなどが念頭にあるとみられる。
日本では「台湾有事は日本有事」(安倍晋三元首相)との声がある。金氏は「台湾有事に日本は絶対に介入すべきではない。この問題で米国はすでに中国に勝つことはできない。日本が介入するなら中国は日本もたたかざるを得ない。新しい変化が起きていることに気づくべきだ」と語った。
◎日本は台湾有事に介入すべきか?
関連記事の中で「(台湾に対して)中国が武力行使に踏み切れば、当然、米国との対決が待っている」と羽田記者は書いているので、この前提で考えてみよう。
日経はこれまで念仏のように「日米同盟の強化」を唱えてきた。言い換えれば「属国路線の強化」だ。そうなると当然に「台湾有事は日本有事」となる。
米国が中国と戦うのだから、日本も子分として協力するしかない。結果として、日本が攻撃を受けた訳でもないのに中国との戦争に突入する。20世紀に続いて21世紀でも中国と戦争だ。
結果が勝利ならば救いはある。しかし「中国は1週間以内に台湾を武力統一できる能力をすでに有している」「解放軍は海岸線から1000カイリ(約1800キロメートル)以内ならば、相手が米軍であっても打ち負かせる」と「金燦栄教授」は述べているらしい。
この分析が正しいのかどうかは分からない。英国、オーストラリアなどを加えるとどうなのかも考える必要があるだろう。だが、他の報道なども併せて考えると台湾有事で「米国との対決」となった場合に中国が圧倒的に劣勢とは考えにくい。
そこでどうするかだ。個人的には「台湾有事に日本は絶対に介入すべきではない」と訴える「金燦栄教授」に同意する。日本は台湾を中国の一部と認めている。中国が武力統一に踏み切ったとしても基本的には中国の国内問題だ。
そこに軍事介入して多くの自衛隊員が命を落とすことを容認できるのか。
「日本が介入するなら中国は日本もたたかざるを得ない」と考えるのは当然だ。そうなれば自衛隊員だけでなく一般市民にも多くの犠牲者が出る。
それでも「台湾有事に日本は絶対に介入すべき」なのか。そこを秋田氏らには考えてほしい。「対中戦争をためらうなとは言いにくいし、だからと言って日米同盟の強化を唱えるのはやめたくないし…」というジレンマがあるのだろう。日経はこの問題でやたらと歯切れが悪い。
しかし「金燦栄教授」は「27年までに武力統一に動く可能性は非常に高い」と強調している。思考停止に陥っている余裕はない。
※今回取り上げた記事「『27年までに台湾武力統一』 中国、米上回る軍事力~タカ派中国人民大の金燦栄教授 米軍介入の有無焦点に」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220131&ng=DGKKZO79688530Q2A130C2FF8000
※記事の評価はB(優れている)。羽田野生記者への評価は暫定でBとする。
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