2022年1月14日金曜日

日経1面「東証再編 市場はよみがえるか(下)」に見える矛盾

14日の日本経済新聞朝刊1面に載った「東証再編 市場はよみがえるか(下)止まらぬ地盤沈下~強い企業へマネー導く」という記事には矛盾を感じた。まず以下のくだりを見てほしい。

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【日経の記事】

地盤沈下の一因は上場企業の水ぶくれだ。「上場企業が多すぎて売買が分散し、全体が割安になってしまっている」(仏コムジェスト・アセットマネジメントのリチャード・ケイ氏)。国内総生産(GDP)比の上場企業数は米や独の4~6倍にのぼる。米国では上場廃止の理由の7割がM&A(合併・買収)。弱い企業が買収されながら新陳代謝が進む


◎「全体が割安」になる?

上場企業が多すぎて売買が分散し、全体が割安になってしまっている」との見方に同意できない。だとすれば日本の「上場企業」を「割安」な値段で買収できるはずだ。そうした動きが日本では乏しい一方で、米国では「弱い企業が買収されながら新陳代謝が進む」とすれば「割安」企業が多いのはむしろ米国の方ではないか。

基本的に「上場企業」の株式が「割安」な価格で長期にわたって放置されることはないと見るべきだ。放置されていればアービトラージャーが現れるはずだ。そうならない特殊な環境になっているのならば、その説明が欲しい。

さらに続きを見ていこう。


【日経の記事】

細るマネーを伸びる企業に振り向けるべく、今回、東証は一計を案じた。

「プライム市場にいるだけでは経済的なメリットは得られない工夫をこらした」。ある金融庁幹部は東証株価指数(TOPIX)から流動性の低い銘柄を除外する決断をこう位置づける。TOPIXは東証1部全銘柄で構成する国際的にも特異な指数のために、成長力の乏しい企業も指数連動運用で買われてしまう。この問題に手を打ち、マネーの拡散を防ぐ狙いだ。

ただ、絞っても1500社程度。「もっと絞り込まないと本当に成長性のある企業が育たない」(京都大学の川北英隆名誉教授)。時価総額上位100社の創業からの「年齢」は日本は約80歳。デジタル時代の勝ち組が増えた60歳代の米欧や30歳未満の中国に比べて老いている。新陳代謝が進む市場設計が急務だ。

「逆ピラミッドを変えなければ」。金融庁や有識者が議論を進めているのが、東証1部は水ぶくれしているのに新興市場は小さく未公開株の取引はほぼない日本の市場構造だ。

米国は上場企業とは別に1万社以上の未公開企業の株式が取引され、有望ベンチャーへの投資も厚い。内部統制など負担が高まる上場の前に成長段階に沿って資金調達できる構造が新陳代謝を支える。


◎「売買が分散」してもいい?

売買が分散」するのはまずいかのように書いていたのに「米国は上場企業とは別に1万社以上の未公開企業の株式が取引され、有望ベンチャーへの投資も厚い」と米国を持ち上げている。

日本では「未公開株の取引はほぼない」のだから、「株式が取引され」ている企業は米国の方が圧倒的に多いはずだ。だとしたら米国でもかなり「売買が分散」している。なのに「売買が分散」すること自体を問題視すべきなのか。



※今回取り上げた記事「東証再編 市場はよみがえるか(下)止まらぬ地盤沈下~強い企業へマネー導く

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220114&ng=DGKKZO79206130U2A110C2MM8000


※記事の評価はD(問題あり)

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