2021年12月29日水曜日

人々は「物価の上昇を予想」してない? 日経コラム「大機小機」に見える誤解

物価に関する記事で「日本ではデフレ期待が強い」といった解説をよく目にする。誤解だと思えるが、なぜか多くの書き手がそう信じているようだ。

田主丸駅

29日の日本経済新聞朝刊マーケット総合面に載った「大機小機~物価上昇の足音が聞こえる」という記事で筆者の隅田川氏は以下のように記している。

【日経の記事】

物価上昇要因は目白押しだが、その実現を阻んでいる唯一の要因が、物価上昇期待が弱いということである。人々が物価の上昇を予想するようになると、この唯一の物価抑制要因は消える。筆者の耳には物価上昇の足音が聞こえ始めている。

◎「物価の上昇を予想」済みでは?

人々が物価の上昇を予想するようになると、この唯一の物価抑制要因は消える」と書いているので、まだ「人々」は「物価の上昇を予想」していないと隅田川氏は見ているのだろう。しかし、何を根拠にそう判断したのかには触れていない。

この問題を考える上で個人的には日銀の「生活意識に関するアンケート調査」を参考にしている。2021年9月調査で「1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うか」との問いに対して平均値は4.3%、中央値は3.0%で、いずれも「消費者物価上昇率2%というデフレ脱却の目標」数値を上回っている。

3月と6月の調査では中央値が2.0%だったので、9月の段階で「人々」はさらに強く「物価の上昇を予想」してきたと判断すべきだ。なのに「物価上昇期待が弱い」のか。隅田氏がそう思い込んでいるだけではないか。先入観を排してよく考えてほしい。


※今回取り上げた記事「大機小機~物価上昇の足音が聞こえる」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20211229&ng=DGKKZO78866310Y1A221C2EN8000


※記事の評価はD(問題あり)

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