27日の日本経済新聞朝刊女性面に載った「社外取締役、お飾りじゃない~女性目線や多様な経験生かす」という記事を読むと、筆者の砂山絵理子記者の狙いとは逆に「女性の社外取締役はやはりお飾りでは」と思えてくる。
雪の田主丸駅 |
「お飾りじゃない」と訴えるために、砂山記者は3人の女性社外取締役を取り上げている。「お飾りじゃない」ことを体現している人物をわざわざ選んでいるはずだが、そう感じられる話は出てこない。まずは「パーソルホールディングスとイオンモールの社外取締役を務める榎本知佐さん」に関する記述から見ていこう。
【日経の記事】
現在務める2社の取締役会はそれぞれ年間13回と16回だが、議題などを個別にレクチャーされる事前説明会が取締役会前に1~3時間ある。また指名・報酬委員会、監査等委員会などにも委員として年10回以上参加。経営会議への参加を求められるケースもある。
会議資料に目を通したり、質問ができるように不明点を詰めたりする時間も必要だ。企業から送付される日報メールや株価週報、メディア掲載記事などに目を通すことも日課としており、毎日両社の仕事に何かしら関わっている。
それでも榎本さんは「経験や知見を生かして企業にアドバイスできることに喜びを感じる」と社外取締役の魅力を語る。企業統治やSDGs(持続可能な開発目標)など様々な企業の事例を読み解くことで、自らの成長も感じるという。
女性ならではの視点も生きる。役員を担うイオンモールの顧客は女性が多いが、管理職は男性中心。店舗に視察に赴き、店舗作りやサービス開発に女性目線が必要であることや、女性が議論に加わることの必要性を訴えている。「社外役員の意見だから、と真剣に耳を傾けてくれる雰囲気もある」。あえて社外取締役という立場で参加するメリットを感じている。
◎いかにも「お飾り」的な臭いが…
「日報メールや株価週報、メディア掲載記事などに目を通すことも日課としており、毎日両社の仕事に何かしら関わっている」と熱心な仕事ぶりをアピールしているが、これは「お飾り」を否定する材料にはならない。
例えば「買収案件で資産査定の不備を指摘して交渉を振り出しに戻させた」などと書いてあれば「お飾りではないかも」と感じられる。しかし、そういった話は出てこない。
「榎本知佐さん」は「経験や知見を生かして企業にアドバイスできることに喜びを感じる」らしいが、取締役会で具体的にどんな「アドバイス」をしているかは不明。
「店舗に視察」に行った時には「店舗作りやサービス開発に女性目線が必要であることや、女性が議論に加わることの必要性を訴えている」ようだが、レベルが低すぎる。
「店舗作りやサービス開発に女性目線が必要であること」は「イオンモール」の男性管理職も当たり前に理解しているだろう。小売業に関わった経験のない自分でも分かる。それをわざわざ従業員に説くのか。
「社外役員の意見だから、と真剣に耳を傾けてくれる雰囲気もある」と感じて気分良く店舗視察を終えているとすれば、まさに役立たずの「お飾り」だ。
2人目に移ろう。
【日経の記事】
医療コンサルティング企業メディヴァの創業者、大石佳能子さんも「上場企業のガバナンスやコンプライアンスに触れられることは、企業経営者として非常に勉強になる」と、社外取締役のやりがいを語る。
これまでアステラス製薬や江崎グリコ、スルガ銀行、アスクル、資生堂など複数社の社外取締役を務めてきた。他業界の企業も少なくないが「例えば化粧品業界なら、健康意識の高まりやドクターズコスメの流行など、自分が関わる医療業界と重なる部分があり、知見が役に立つ」と話す。
◎これだけ?
「大石佳能子さん」に関する記述はこれだけだ。「やりがい」はあるようだが「お飾りじゃない」と見なすべき材料は見当たらない。
3人目も見ておこう。
【日経の記事】
需要の高まりを受け、自ら社外取締役に手を挙げる女性も出てきている。昨年12月、社外役員の候補者を企業に紹介するサービスを始めたビザスクには、役員経験者、定年退職したキャリア女性のほか、30~40代の起業経験者などが役員候補として登録してくる。
その1人、斉木愛子さんは大学卒業後、大和証券SMBC(当時)やUBS銀行などでキャリアを積んだ。19年に独立し、ベンチャー企業の取締役を務める傍ら、この秋にベンチャーのSDGs/ESG(環境・社会・企業統治)経営を支援する会社を起業した。
「取締役や起業、海外での勤務経験、育児と仕事の両立などの経験を生かせたら」と斉木さん。金融、テクノロジーなどの分野に強みがあることを示す「スキルマップ」などを作成し、社外取締役を探す企業に積極的にアピールする。
◎結局「お飾り」しかいない?
「斉木愛子さん」に関しては「社外取締役」としての何をしてきたのか説明がない。さらに苦しくなっている。
女性の「社外取締役」は「お飾りじゃない」と訴えようとした砂山記者が探し出した人物の中で、最も「お飾り」度が低いと見えたのが、最初に出てきた「榎本知佐さん」なのだろう。しかし既に述べたように、それでも「お飾り」に見える。残りの2人は論外だ。
実際は3人とも「お飾りじゃない」のかもしれないが、少なくとも記事からはそう感じられない。
「お飾りじゃない」ことを一生懸命に訴えようと記者が頑張っても「お飾りじゃない」という明確な根拠は示せない。その事実が女性社外取締役の全体としての「お飾り」度の高さを裏付けているのではないか。
※今回取り上げた記事「社外取締役、お飾りじゃない~女性目線や多様な経験生かす」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20211227&ng=DGKKZO78757040U1A221C2TY5000
※記事の評価はD(問題あり)。砂山絵理子記者への評価も暫定でDとする。
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