2021年11月2日火曜日

昨年後半の致死率急低下を「ワクチン効果」と言い切る日経の錯誤

一度何かを信じたら、それを修正するのは難しいということか。2日の日本経済新聞朝刊総合1面に載った「コロナ致死率、ピークの3分の1~ワクチン浸透 世界で死者500万人」という記事を読んで、そんなことを思った。「ワクチン浸透」の結果として「コロナ致死率、ピークの3分の1」という作りになっているが、どう考えても無理がある。

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最初の段落を見てみよう。

【日経の記事】

世界で新型コロナウイルスの感染に伴う死者数が累計500万人を超えた。季節性インフルエンザなどと比べてなお死亡リスクは高いものの、先進国を中心にワクチン効果が浸透し、致死率はピークの3分の1以下に低下した。ワクチンの偏在を解消して接種の遅れる途上国への供給を促すと同時に、開発の進む治療薬の普及を急ぎ、コロナの致死率を一段と引き下げることが日常生活を取り戻すカギとなる。


◎なんでそうなる?

先進国を中心にワクチン効果が浸透し、致死率はピークの3分の1以下に低下した」と言い切っている。記事に付けたグラフからは「世界の累計死者数を累計感染者数で割った『致死率』は直近で2%程度(日本は1%程度)とピークだった2020年春頃の3分の1以下に低下した」ことが読み取れる。しかし、この説明は重要な点に触れていない。

致死率」は「ピーク」を付けた後に急激に低下し「2020年」の終わりごろには「ピークの3分の1以下に低下」し、その後はほぼ横ばいだ。

一方、海外も含めワクチン接種が本格化したのは2021年になってからだ。つまり「2020年春頃」から年末にかけての急激な「致死率」の低下を「ワクチン効果」では説明できない。今年に入って「致死率」が下げ止まっていることを考えると「ワクチン」には「致死率」を下げる力はないのではと疑う方が自然だ。なのになぜか「ワクチン効果が浸透し、致死率はピークの3分の1以下に低下した」と書いてしまう。

意図的に読者を誤解させようとしているのか。それとも「ワクチン」信仰が強すぎて、まともな分析ができていないのか。筆者の判断力が極度に低下しているとしてもデスクが「おかしい」と気付いていれば、この内容で良しとはならなかったはずだ。なのに、なぜこうなってしまったのか。

2020年春頃」から年末にかけての「致死率」低下を2021年に入って接種が本格化した「ワクチン」の効果で説明できるのかーー。改めて考えてほしい。


※今回取り上げた記事「コロナ致死率、ピークの3分の1~ワクチン浸透 世界で死者500万人」

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20211102&ng=DGKKZO77189070R01C21A1EA1000


※記事の評価はE(大いに問題あり)

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