2021年11月14日日曜日

「新規感染者に底打ち感」と伝えた日経に感じるゼロコロナ志向

やはりゼロコロナを目指すのが日本経済新聞の考えなのか。14日の朝刊総合2面に載った「感染者下げ止まり 東京、11月は横ばい~若年層の感染目立つ」という記事は、そう感じさせる内容だった。そこは日経の勝手かもしれないが、説明には色々と無理があった。中身を見ながら具体的に指摘したい。

大阪城

【日経の記事】

減少傾向にあった新型コロナウイルスの新規感染者に底打ち感が出ている。東京都の13日時点の7日間平均は約24人と、前週より20%増えた。今夏の「第5波」のピーク時と比べると0.5%程度の低い水準ではあるものの、11月に入ってほぼ横ばい圏にある。ワクチン接種対象外の10歳未満の子供ら若年層の感染が目立つ


◎「低水準のまま」でいいのでは?

ピーク時と比べると0.5%程度の低い水準」まで来れば「底打ち」するのは当然だ。東京都の人口を考えれば「24人」は「ゼロコロナをほぼ達成」とも言える。しかし、そうは考えずに「下げ止まり」「底打ち」と見るのか。

続きを見ていこう。


【日経の記事】

東京都では8月19日の約4923人をピークとしてワクチン接種率の上昇などを受けて減ってきたが、11月第2週は20人台で推移する。


◎「分からない」でいいのでは?

感染者数が減った要因として「ワクチン接種率の上昇」を挙げるのは無理がある。そもそも「8月19日」に「ピーク」を迎えるまでの段階で「接種率の上昇」は続いていた。「接種率」と感染者数の関連はかなり乏しい。急減の理由は「分からない」が妥当だろう。

さらに続きを見ていく。


【日経の記事】

国立国際医療研究センターの大曲貴夫・国際感染症センター長は11日、都内の感染状況を評価するモニタリング会議後に「(新規感染者は)下げ止まったと考えている」と述べた。

同日のモニタリング会議では新規感染者のうち、30歳代以下の若年層が6割弱を占めると報告された。若年層のワクチン接種率は高齢者らと比べると低い。また、接種対象外の10歳未満の割合が1割強に上昇した


◎これまた強引な…

最初の段落で「ワクチン接種対象外の10歳未満の子供ら若年層の感染が目立つ」と書いているが「10歳未満の割合」は「1割強」に過ぎない。しかも過去との比較も見せていない。東京都の1日当たりの感染者数が「20人台」だとすると、そのうち「10歳未満」は2~3人だ。なのに「10歳未満」を強調する意味があるのか。子供の「ワクチン接種」を推進したい意図があるとすれば、かなり筋が悪い。

さらに記事を見ていく。

【日経の記事】

自治体によっては感染者が確認されない日もあるなか、大阪府でも減少ペースは鈍り、足元の新規感染者の7日間平均は30人前後。11日には豊中市の児童施設でクラスター(感染者集団)の発生が明らかになった。少なくとも未就学児27人と職員11人の感染が確認された。


◎なぜ東京と大阪だけ?

今回の記事は東京都と大阪府の数字しか見せていない。グラフもそうだ。

減少傾向にあった新型コロナウイルスの新規感染者に底打ち感が出ている」と伝えたいのならば、全国の数字を見せるのが素直だ。なぜ、そこは避けたのか。「減少傾向」が続いているからなのか。

記事の終盤も見ておこう。


【日経の記事】

ワクチンの普及とともに接種後に感染する「ブレークスルー感染」も起きている。大阪府の調査では、10月1~17日に判明した感染者の12%が2回接種して2週間たっていた。ワクチンを打っていても感染する可能性があり、自治体はマスクの着用や手洗いなど基本的な感染防止対策の徹底を呼びかけている。

国際医療福祉大学の和田耕治教授(公衆衛生学)は「新規感染者は一部地域でやや増えているものの、現段階はリバウンドの状態ではない」と指摘したうえで、「規模がどれくらいになるかは不明ながら、第6波はどこかで来る。感染者が増えてきたときに警戒を呼びかけられるかがカギになる」と話す。


◎コメントが謎…

感染者が増えてきたときに警戒を呼びかけられるかがカギになる」という「国際医療福祉大学の和田耕治教授」のコメントは何を言いたいのか分かりにくい。

まず何の「カギになる」のか。「第6波はどこかで来る」のだから「第6波」を未然に防ぐための「カギ」ではないようだ。では何だろう。候補は色々と考えられるが、記事からは特定できない。

それに「感染者が増えてきたときに警戒を呼びかけられるかがカギになる」と言われると「警戒を呼びかけ」ることが難しいようにも感じるが、簡単ではないのか。「感染者が増えてきたとき」には政府、自治体、メディアなどが勝手に色々と「警戒を呼びかけ」てしまうはずだ。つまり「カギ」はほぼ確実に機能する。だとしたら「和田耕治教授」は何を心配しているのか。


※今回取り上げた記事「感染者下げ止まり 東京、11月は横ばい~若年層の感染目立つ」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20211114&ng=DGKKZO77551680U1A111C2EA2000


※記事の評価はD(問題あり)

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