記事の書き手は固定観念に囚われないことが大事だ。最近の新型コロナウイルス関連記事を読んでいると「ワクチンには大きな効果がある」という思い込みがもたらす弊害が目に付く。27日付で日本経済新聞電子版に石川潤記者が書いた「ドイツの新規感染者7万人超、空軍が重症者を輸送」という記事もそうだ。
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全文を見た上で問題点を指摘したい。
【日経の記事】
ドイツの新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。独ロベルト・コッホ研究所が26日公表した新規感染者数は7万6000人を突破し、3日連続で過去最高を更新した。医療システムへの負担が高まり、独空軍は同日、感染の深刻な地域からの重症者の輸送を開始した。行動制限の強化やワクチン接種の義務付けなどの追加策を求める声も高まってきた。
ドイツのワクチン接種率は68%だが、東部ザクセン州の接種率が58%にとどまるなど、地域間で差がある。接種率の低い東部、南部を中心に感染が広がり、医療システムの逼迫が深刻になっている。集中治療を受ける患者数は4300人を超え、過去のピーク(5700人強)に近づいている。死者は累計で10万人を突破した。
独空軍の特別機は26日、感染が広がっている南部バイエルン州から、比較的抑えられている西部へ重症者を輸送する作業に着手した。医療崩壊を避ける狙いだが、ドイツ全体で感染が拡大しているため、対応には限界もある。
ドイツは24日にドイツ社会民主党、緑の党、自由民主党の3党が連立政権の樹立で合意し、12月上旬にショルツ政権が成立する見通しとなった。感染の抑制と医療崩壊の回避が新政権の最初の課題となる。ドイツは18日、ワクチン未接種者への規制を強化し、電車や職場でも接種済みか検査陰性の証明を求めると決めたばかりだ。
◎なぜ「ドイツ全体で感染が拡大」?
「ドイツ全体で感染が拡大している」と石川記者は言う。しかし、なぜ「ドイツ全体で感染が拡大している」のかは説明していない。「ドイツのワクチン接種率は68%」とかなり高い。それでも「新規感染者数は7万6000人を突破し、3日連続で過去最高を更新した」のならば「ワクチン」の効果はかなり低いと見るのが自然だ。
「ドイツ全体で感染が拡大している」理由が分からないのならば仕方がない。だったら、そう書くべきだ。なのに「接種率の低い東部、南部を中心に感染が広がり~」と「接種率」の差が感染状況の差につながっているような書き方をしている。
だが「東部ザクセン州の接種率」は「58%」で全体の接種率である「68%」と大差はない。「58%」と「68%」には決定的な違いがあるのか。あるとしたら、なぜ「接種率の低い東部、南部」だけでなく「ドイツ全体で感染が拡大している」のか。
そこを石川記者には考えてほしい。「ワクチンは非常に有効」という前提を疑ってみないと客観的な分析は難しいはずだ。
※今回取り上げた記事「ドイツの新規感染者7万人超、空軍が重症者を輸送」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR26DPV0W1A121C2000000/
※記事の評価はD(問題あり)。石川潤記者への評価はDを維持する。石川記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。
日銀担当 石川潤記者への信頼が揺らぐ日経「真相深層」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2016/09/blog-post_29.html
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