11日付の東洋経済オンラインにファイナンシャル・プランナーの渡邊一慶氏が書いた 「『銀行にお金を預けるのが損』だとわかる納得理由~今の金利はバブル期の『4000分の1』しかない」という記事は色々と問題が多い。中身を見ながら具体的に指摘したい。
夕暮れ時の筑後川 |
【東洋経済オンラインの記事】
――いきなりなんですが、渡邊さん、本当に渡邊さんのお話をお聞きしただけで、お金持ちになる知識が得られるんですか? 言っておきますが、僕は高校も大学も受験せず、適当な推薦で入っちゃったので、本当に頭悪いですよ!
◎「受験」しているのでは?
聞き手である「編集者の丑久保氏」は、最初の質問で「僕は高校も大学も受験せず、適当な推薦で入っちゃったので、本当に頭悪いですよ!」と述べている。「推薦で入っちゃった」のならば「受験」しているはずだ。
次に渡邊氏の発言を見ていく。
【東洋経済オンラインの記事】
もしも、お金自体に価値があるのなら、1万円で買えるモノやサービスは、つねに同じでなければおかしいですよね。お金の価値がつねに一定であれば、「今日は安い」とか「今日は高い」と感じることはないはずなんです。
◎おかしくないのでは?
「もしも、お金自体に価値があるのなら、1万円で買えるモノやサービスは、つねに同じでなければおかしいですよね」と渡邊氏は言うが、おかしいとは感じない。
「じつは、お金自体には何の価値もありません」「紙幣はただの紙切れで、硬貨はただの金属です。事実、1万円の原価はたったの25円です」と渡邊氏は言う。ならば「価値がある」ものを「お金」にしたらどうなるか。例えばコメならば食料にもできる。しかしコメ1キロの「お金」で買えるガソリンの量は日々変化するだろう。ガソリンが足りない時は変える量が減るし、逆にコメが不足している時はガソリンを買える量が多くなる。
「価値がある」からと言って、他の「モノやサービス」と交換できる量が「つねに同じ」とは限らない。変動する方が自然だ。「価値がある」と「価値がつねに一定」は別の話だ。そこを渡邊氏は理解していない気がする。
結論部分に話を移そう。
【東洋経済オンラインの記事】
渡邊:そうです。もし今現在1000万円の資産があるとして、預金だけで2000万円を準備しようとした場合、8%の金利と0.002%の金利で、どのくらい差が出るのかわかりますか?
――えーっと……。どのくらいかはわかりませんが、けっこうな差が出ます!
渡邊:(い、潔い!)金利が8%の場合は9年で2000万円を準備できるのに対して、金利が0.002%の場合は3万6000年もかかってしまうのです。
――3万6000年!? それって、僕たちが生きている間には、絶対に実現不可能じゃないですか!
渡邊:そうです。預金と投資の違いを簡単に説明すると、今現在の金利水準が続いている間に資産が2倍になることはないのが預金、資産が2倍になる可能性があるのが投資なのです。
◎ 「『銀行にお金を預けるのが損』だとわかる納得理由」はどこに?
記事を最後まで読んでも「『銀行にお金を預けるのが損』だとわかる納得理由」が見当たらない。強いて言えば「預金」の金利がほぼゼロだからか。だからと言って「銀行にお金を預けるのが損」とは限らない。低リスクというメリットを考慮する必要がある。
1000万円以下の「預金」であれば、元本割れのリスクはほぼゼロ。低リスク低リターンで辻褄は合っている。それを踏まえた上で「銀行にお金を預けるのが損」かどうかを判断すべきだ。
「投資」を宝くじに当てはめてみると分かりやすい。
「今現在の金利水準が続いている間に資産が2倍になることはないのが預金、資産が2倍になる可能性があるのが宝くじ」とは言える。だからと言って「預金は損。だったら宝くじを買った方が得」とはならないはずだ。宝くじの期待リターンの低さとリスクの高さを考えると「銀行にお金を預け」たままにしておく方が賢明だ。
渡邊氏は「スイスのプライベートバンクで働いて」いたらしいが、そこで磨いたのは顧客を投資に引き込むテクニックなのかもしれない。信じてはいけない書き手だと感じた。
※今回取り上げた記事 「『銀行にお金を預けるのが損』だとわかる納得理由~今の金利はバブル期の『4000分の1』しかない」
https://toyokeizai.net/articles/-/457739
※記事の評価はD(問題あり)
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