2021年7月2日金曜日

「情報収集、SNS主流に」と言える根拠が見当たらない日経の記事

 最近の日本経済新聞では、背景説明ばかりで肝心の情報が乏しい記事が目立つ。2日の朝刊テック面に載った「情報収集、SNS主流に~10~50代 民間調査、半数以上が検索機能利用」という記事もそうだ。全文は以下の通り。

夕暮れ時の工事現場

【日経の記事】

SNS(交流サイト)が情報収集ツールとして存在感を高めている。ハッシュタグ(検索目印)やリコメンド機能で情報を取得する人が増え、民間調査では半数以上がSNSの検索機能を使うと回答。SNS各社は検索機能の拡充を進め利用者の囲い込みを急ぐ。

調査会社ゼネラルリサーチ(東京・渋谷)が10~50代の男女1000人に実施した調査では、5割以上が情報収集などでSNSの検索機能を使うと答えた。電通メディアイノベーションラボの天野彬氏は「若者は検索の主流がグーグルを利用する『ググる』からSNSのタグを探す『タグる』に移った」と指摘する。

SNSでの検索の強みはリアルタイム性だ。例えばツイッターの場合、外出先の天気や電車の遅延情報などすぐに必要な情報を得るのに向く。ガイアックスでSNSマーケティング事業を統括する重枝義樹氏は「飲食店の混み具合などSNSだけで瞬時に必要な情報が把握できる」と話す。

インスタグラムでは20年11月に米国などでキーワード検索機能が追加された。従来は投稿にハッシュタグが付随していない場合、検索しても結果に表示されなかった。新機能ではキーワードを入力すると、アカウント、位置情報などを含む複数の要素から関連性の高い投稿が検索できる。

動画投稿アプリのTikTokは、ビッグデータと機械学習を用いた計算手法(アルゴリズム)により自ら検索しなくてもリコメンドされた動画からトレンド情報などを収集できる。バイトダンス日本法人の佐藤陽一氏は「画像検索など動画とリンクした検索機能の追加も検討する」と話す。


◎何を根拠に「主流」と判断?

見出しで「情報収集、SNS主流に」と打ち出し、本文では「SNS(交流サイト)が情報収集ツールとして存在感を高めている」と書いているが、それを裏付けるデータは見当たらない。

調査会社ゼネラルリサーチ(東京・渋谷)が10~50代の男女1000人に実施した調査では、5割以上が情報収集などでSNSの検索機能を使うと答えた」とは書いている。しかし、これでは「情報収集、SNS主流に」とは言い切れない。テレビなどとの比較がないからだ。

若者は検索の主流がグーグルを利用する『ググる』からSNSのタグを探す『タグる』に移った」とのコメントは出てくるが、「検索の主流がグーグル」から「SNS」に移っていると言えるデータも、やはりない。しかも、このコメントは「若者」限定の話だ。

では「SNSが情報収集ツールとして存在感を高めている」とは言えるだろうか。これも苦しい。「存在感を高めている」ことを裏付けるためには過去との比較が要る。いつと比べて、どのぐらい「存在感を高めている」のか具体的な数値を見せてほしい。「SNS」がなかった時代と比べて「存在感を高めている」と訴えたい訳ではないはずだ。

結局、肝心の情報を伝えないまま記事の半分以上を背景説明に費やしている。

こんな説得力の乏しい記事でいいのか。よく考えてほしい。


※今回取り上げた記事「情報収集、SNS主流に~10~50代 民間調査、半数以上が検索機能利用


※記事の評価はD(問題あり)

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