13日の日本経済新聞朝刊オピニオン面に小竹洋之編集委員が書いた「Deep Insight~『コロナ世代』を癒やせるか」という記事の問題意識は評価できる。「感染症の拡大を防ぐ都市封鎖や行動規制は、90年代後半以降に生まれた『Z世代』から多くの機会や経験を奪った」のは、その通りだ。しかし記事には肝心の具体策が見えない。
筑後川と夕陽 |
「米同時テロ」や「大恐慌」を振り返る暇があるならば、今どんな対策を打つべきか語ってほしい。「メンタルヘルス(心の健康)対策や教育・雇用支援などが必要」という漠然とした話では困る。記事の終盤を見てみよう。
【日経の記事】
しかしZ世代の適応に頼り切り、病理を放置するわけにはいかない。メンタルヘルス(心の健康)対策や教育・雇用支援などが必要なのは、日本も同じだ。
コロナ禍に遭遇した私たちは、感染症の封じ込めと正常な経済社会活動とのトレードオフ(相反関係)に悩まされてきた。あちらを立てればこちらが立たず、いまも正解を見いだせてはいない。
政府は東京都に4度目の緊急事態宣言を発令した。国民の命を守るのは当然だとしても、次の時代を担う若者や子どもたちに過度の犠牲を強いてはいないか。彼らの手足を安易に縛らず、人生の大事なピースを失わせずにすむ方法を何とか見つけられないものか。私たち一人ひとりが胸に手を当てて、問い直さねばなるまい。
中高年の有権者と政治家が影響力を行使する先進国の民主主義体制では、Z世代の声が届きにくい。その不満や憤りは、米欧などに巣くう左右のポピュリズム(大衆迎合主義)の燃料にもなる。
「コロナ世代」を癒やせるかどうかに、世界の未来がかかっている。心してかかるべき課題だ。
◎簡単な話では?
「Z世代の適応に頼り切り、病理を放置するわけにはいかない」「『コロナ世代』を癒やせるかどうかに、世界の未来がかかっている」との問題意識があるのならば、そんなに難しい話ではない。
「感染症の封じ込めと正常な経済社会活動とのトレードオフ(相反関係)」はあるだろう。だが「『コロナ世代』を癒やせるかどうかに、世界の未来がかかっている」のだから若者重視の対策を打ち出せばいい。
新型コロナウイルスが若者を殺す力はゼロに近い。一方で高齢者にとってはそこそこリスクがある。高齢者に「世界の未来がかかっている」訳ではないのは誰でも分かる。なので若者重視でいい。
対策は簡単だ。基本的にコロナ前に戻せばいい。
「高齢者を見殺しにするのか」という批判に対しては「コロナが怖い人はワクチンを接種してください。それでも怖い人は外出を避けるといった防衛策を取りましょう。そうすれば、かなりリスクは軽減できるはずです」と返せばいい。
この考えに小竹編集委員も同意しろとは言わない。小竹編集委員独自の考えがあっていい。記事を読む限りでは、どうしたらいいか迷っているようだ。だから「私たち一人ひとりが胸に手を当てて、問い直さねばなるまい」「あちらを立てればこちらが立たず、いまも正解を見いだせてはいない」などと書いてしまうのだろう。
「『コロナ世代』を癒やせるかどうかに、世界の未来がかかっている」のならば「正常な経済社会活動」を重視するのが道理だ。それをやると高齢者の半分以上は1年以内に死亡するというなら迷うのも分かるが、ワクチン接種も進む中、元々さざ波程度の感染しかない日本では高齢者のリスクも限定的だ。
改めて引用するが「『コロナ世代』を癒やせるかどうかに、世界の未来がかかっている」のだ。「世界の未来」を守るためにはどう動くべきか。今こそ明確な指針を示してほしい。
※今回取り上げた記事「Deep Insight~『コロナ世代』を癒やせるか」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210713&ng=DGKKZO73785650S1A710C2TCR000
※記事の評価はD(問題あり)。小竹洋之編集委員への評価はDを据え置く。小竹編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。
色々と問題目立つ日経 小竹洋之論説委員の「中外時評」https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/blog-post_14.html
「『大きな中央銀行』でいいのか」と問うた日経 小竹洋之上級論説委員に注文https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/06/blog-post.html
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