2021年6月6日日曜日

女性差別がゼロにならない限り男性「逆差別」はOK? 浜田敬子氏に問う

週刊東洋経済6月12日号にジャーナリストの浜田敬子氏が書いた「女性登用 突破口はトップの決断が開く~女性リーダー『3割』は必須」という記事の問題点をさらに指摘したい。「女性を積極的に採用・登用する際に必ず挙がるのが、『女性優遇』『逆差別だ』『能力で選ぶべき』という批判である」と述べた上で「逆差別」について以下のように書いている。

坂の上の雲

【東洋経済の記事】

「逆差別」という反論に対しては、そもそも採用や登用に当たって、女性の能力が正当に公正に評価されているのか、と言いたい。18年に発覚した、東京医科大学など複数の医学部入試で女子受験生や浪人生が不当に減点されていた事件を、思い出してほしい。

女性が結婚・出産というライフイベントで長時間働けない、離職する可能性があるという理由で、“入り口”で差別されていた医学部の事件。企業の採用や登用でここまであからさまでないにしても、「女性は出産するから」「彼女は子どもがいるから」と候補から外すケースは、本当にゼロといえるか。目に見えない無意識の差別が根強くある限り、意識的に女性の採用や登用を進めることは、逆差別でなく「不平等の是正」なのだ、という認識が必要だろう


◎答えになっていないのでは?

逆差別」とは「社会的弱者などの優遇措置をとることにより、それ以外の人々への処遇が相対的に悪化すること」(デジタル大辞泉)を指す。「女性を積極的に採用・登用する」ことに関して言えば、それによって男性の「処遇が相対的に悪化する」ならば「逆差別」だ。「採用や登用に当たって、女性の能力が正当に公正に評価されているのか」どうかは関係ない。

なのに浜田氏は「逆差別でなく『不平等の是正』なのだ、という認識が必要だろう」と結論付けている。であれば「逆差別」には当たらないとの根拠を示すべきだ。それがないのになぜ「逆差別」ではないと「認識」すべきなのか。

「『逆差別』ではあるが、女性に対する『不平等』が残る限り『逆差別』は正当化される」と訴えた方が辻褄は合う。つまり「差別」に対して「差別」で対抗する訳だ。それが「不平等の是正」につながるとの考え方を完全には否定しない。ただ、そうなると「差別」を是認するしかない。なので、あまりお薦めしない。

目に見えない無意識の差別が根強くある限り」は男性への「逆差別」が許されるとしよう。この考え方だと男性差別が無限に許容される。「目に見えない無意識の差別」がゼロになったとの証明は誰にもできないからだ。結果として男性差別を拡大していけば、当然に「差別で大きな不利益を被っているのは男性の方だ」との不満は大きくなる。

しかし浜田氏の考えを政府が採用する場合、男性差別の拡大に限界はない。女性には悪くない話かもしれないが、男性には救いがない。

それを避けるためには「差別」そのものをなくす方向に動くのが好ましい。女性に対する「目に見えない無意識の差別」があるとすれば、その対抗として男性への「差別」を新たに生み出すのではなく、「目に見えない無意識の差別」の方を消そうと注力していく。その方が健全な男女平等社会につながると思える。

差別」には「差別」で対抗して「不平等の是正」を目指すべきなのか。それとも「差別」そのものを無くしていくべきなのか。浜田氏には改めて考えてほしい。


※今回取り上げた記事「女性登用 突破口はトップの決断が開く~女性リーダー『3割』は必須

https://premium.toyokeizai.net/articles/-/27128


※記事の評価はD(問題あり)。今回の記事に関しては以下の投稿も参照してほしい。

東洋経済で「女性リーダー『3割』は必須」と訴えた浜田敬子氏に異議ありhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2021/06/blog-post_5.html

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