2021年3月2日火曜日

百貨店の「在庫リスク」の説明が違うような…日経「Jフロント、衣料品の定額課金」

2日の日本経済新聞朝刊1面に載った「Jフロント、衣料品の定額課金~月1.1万円 コロナ下、収益補完狙う」という記事の最後に「百貨店にとって衣料品は圧倒的な稼ぎ頭だ。ただ販売減で在庫リスクも高まっており、利用で稼ぐことで負担を減らす」という説明が出てくる。これは引っかかった。

大山ダム

百貨店の「衣料品」販売は基本的に消化仕入れだ。店頭で売れてから仕入れる形を取るので百貨店には「在庫リスク」がない。テナントとしてアパレルを入れている場合は賃料を取る形なので、やはり「在庫リスク」とは無縁だ。

Jフロント傘下の大丸松坂屋百貨店」が上記の2つの方式を基本にしている場合「在庫リスクも高まっており」という説明は問題が出てくる。

では、かなりの規模で買い取りの形で販売している場合はどうか。「新型コロナウイルスで来店客が減る」と想定しているのならば、仕入れ規模を抑制しているはずなので、基本的には「在庫リスク」も低下する可能性が高い。販売増加を見越して積極的に仕入れをしている時の方が「在庫リスク」は増すはずだ。

さらに言えば「利用で稼ぐことで負担を減らす」という話にもなりにくい気がする。

記事によると「大丸松坂屋が取引先のブランドから買い取り、顧客の利用データや経年変化などのデータをブランド側と共有」する仕組みらしい。この場合「在庫リスク」が新たに生じてしまう。消化仕入れなどで「在庫リスク」をできるだけ負わずにやってきた百貨店が「在庫リスク」を抱えて新たな道へ踏み出すと評価すべきなのかもしれない。

ただ、今回のニュースは1面に持っていくほどの話なのかとは感じた。

衣料品のサブスクリプション(定額課金)サービス」に関して「5年後に会員数3万人、売上高で年55億~60億円を目指す」らしい。目標を達成したとしても利益貢献としては10億円レベルだろう。「Jフロント」の業績に大きな貢献は期待できない。

毎月3着まで着用できる」と書いているが、「たった3着なのか」とも感じた。この分野に詳しい訳ではないが、他の「衣料品のサブスクサービス」と比べて料金も含め優位性は感じられない。

記事には「まず国内外の約50ブランドが参加。『マルニ』『シーバイクロエ』など海外有力ブランドのほか、三陽商会の『エポカ』なども入る」と書いてあり、ここがポイントなのだろう。

例えば「海外有力ブランド」の服をそろえた「サブスクサービス」は初めてといった説明があれば、少しは1面らしさが出てくる。記事には「小売り大手による衣料品のサブスクサービスは初めて」との記述はある。新規性のアピールとして、これが精一杯だとしたら、やはり1面ネタには苦しい。


※今回取り上げた記事「Jフロント、衣料品の定額課金~月1.1万円 コロナ下、収益補完狙う

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210302&ng=DGKKZO69554560S1A300C2MM8000


※記事の評価はD(問題あり)

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