2021年3月14日日曜日

日経「日銀、ETF購入柔軟に~年6兆円目安、削除案が浮上」の辻褄合わない説明

13日の日本経済新聞朝刊総合2面に載った 「日銀、ETF購入柔軟に~年6兆円目安、削除案が浮上 株高で買い入れ見送り」という記事に気になる記述があった。

横浜税関本関庁舎

【日経の記事】

日銀は次回の決定会合でETFの購入方法を見直す方針だ。雨宮正佳副総裁は「メリハリのある買い入れを行うことで金融緩和の持続性を高める」との考えを示している。普段は購入を見送りつつ、株価急落時に巨額の買い入れに動く余地を残す方向だ。

焦点はETF購入にかかわる二つの目安の扱いだ。まず年12兆円の上限は、なくしたり引き下げたりすると「緩和後退」と受け取られる懸念がある。急速な円高・株安などの混乱を招かないよう、この上限は残す可能性が高まっている。

一方で年6兆円の原則については日銀内で「削除してもいい」(幹部)との意見が出てきた。この額に縛られるとメリハリをつけた買い入れが難しくなる面がある。市場動向をにらみながら、削除する方向で検討する。


◎だったら逆では?

日銀の「ETF購入」では「年12兆円の上限」と「年6兆円の原則」がある。つまり6兆~12兆円が年間の購入額となる。どちらかを「削除」するとしよう。その時に「緩和後退」と受け取られるのは避けたい。となれば「削除」すべきなのは「年12兆円の上限」となるのが自然だ。これをなくせば20兆円でも30兆円でも買える。追加緩和とも取れる。

一方「年6兆円」を「削除」すれば下限がなくなる。全く買わない選択肢も出てくるので「『緩和後退』と受け取られる懸念」は当然にある。なのに日銀は「年6兆円」を「削除」する方向らしい。

それはそれでいい。実質的には「緩和後退」だが、そう受け取られたくはないという考えなのだろう。問題は日経の方にある。「年12兆円の上限は、なくしたり引き下げたりすると『緩和後退』と受け取られる懸念がある」から「年6兆円」を「削除」する話が出ていると解説している。理屈が合っていない。

おそらく日銀関係者の説明をそのまま記事にしたのだろう。だが、そこは「理屈に合いませんよね。緩和後退と取られたくないなら上限の12兆円を削るしかないでしょ。下限の6兆円を削れば緩和後退と見るのが当然でしょ」などと取材時にツッコミを入れてほしかった。

取材先との力関係でそれが難しいとしても、記事に書く際に工夫はできたはずだ。なのに辻褄の合わない話をそのまま読者に届けてしまうとは…。

あるいは理屈に合わないことに気付いていないのだろうか。いずれにしても問題ありだ。


※今回取り上げた記事「日銀、ETF購入柔軟に~年6兆円目安、削除案が浮上 株高で買い入れ見送り

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210313&ng=DGKKZO69956670S1A310C2EA4000


※記事の評価はD(問題あり)

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