2021年2月2日火曜日

「毎年決まった日」にリバランスすべき?篠田尚子氏の週刊エコノミストでの解説に異議

楽天証券経済研究所ファンドアナリストの篠田尚子氏を書き手として信頼するなと以前から訴えてきた。金融業界に属する人なので、業界の利益代弁者であることを責めるつもりはない。だが篠田氏に記事を任せるメディアは責められるべきだ。

錦帯橋

週刊エコノミスト2月9日号の特集「今から始める投資信託」の中の「いまさら聞けない! Q&Aで分かる投資信託」という記事の問題点を指摘してみたい。まずは「リバランス」について考えよう。

【エコノミストの記事】

個人の資産形成の場合は、自身の誕生日など、毎年決まった日にリバランスを実施することをおすすめする。例えば、誕生日に保有する投資信託を確認し、20%程度の利益が出ているファンドがあれば、その利益相当分を解約(売却)して比率の低下したファンドを買い増す、というのがよいだろう。


◎やはり「ファンド」を買う?

個人の資産形成」で「リバランス」は必要ないと見ている。1000万円の金融資産があり、300万円は安全資産で持っておきたいと考えたならば、300万円の安全資産さえ確保しておけば良い。緊急の支出で安全資産が200万円に減ったならば、リスク資産を売って安全資産を300万円に戻す。そういう意味での「リバランス」は分かるが、リスク資産の値上がりで安全資産の比率が低下しただけならば放置でいい。

700万円のリスク資産が値上がりしたからと言って、なぜ「リバランス」するのか。最低限必要な安全資産は確保しているのだから、リスク資産の比率が高まっても問題はない。

百歩譲って「リスク資産70%、安全資産30%と決めたのならば、それを維持すべき」という話ならばまだ分かる。だが篠田氏は「20%程度の利益が出ているファンドがあれば、その利益相当分を解約(売却)して比率の低下したファンドを買い増す」ことを提案している。いずれにしても「ファンド」は持ち続けるらしい。投資対象が似たような「ファンド」の場合、この「リバランス」にほとんど意味はない。

さらには「自身の誕生日など、毎年決まった日にリバランスを実施することをおすすめ」している。「リバランス」は必要に応じて行うべきだ。先述した例で言えば、緊急支出で安全資産の金額が目減りした時になる。そうしたイベントは「自身の誕生日など、毎年決まった日」に起きる訳ではない。

次は「インデックス型とアクティブ型どちらが良い?」という問いへの答えを見ていく。


【エコノミストの記事】

マニュアルに沿った運用を行うインデックス型は、コスト(信託報酬)を低く抑えられる点に最大の特徴がある。他方、アクティブ型は、原則として指数を上回る運用成績を目指すため、運用担当者であるファンドマネジャーには相応の努力が求められ、同時にコストもかかる。

コストだけ見ると、インデックス型の方が優れているように思えるが、どちらかが優れているということはない。インデックス型には、株式市場が大きく乱高下する局面でも、その値動きを受容するほかないという商品性の限界がある。その点、アクティブ型には、市場環境が不安定な中でもリターンを獲得できたり、リスクを抑えた運用ができたりする利点がある。重要なのは、状況やニーズに応じて両者を使い分けることだ。

これから資産形成を始めるなら、まずは高度に分散された「全世界株式」などのインデックス型ファンドでポートフォリオの土台を作り、資金面で余裕が出てからサテライト的にアクティブ型を取り入れるのがよいだろう


◎コストで負けているなら…

アクティブ運用とパッシブ運用(インデックス型)の「どちらかが優れているということはない」とは思う。これは「コスト」を考えない場合だ。「インデックス型は、コスト(信託報酬)を低く抑えられる」のであれば、その分だけ「インデックス型の方が優れている」。

コスト」で負ける分、リターンでは「アクティブ型」が上回るなら話は別だが、篠田氏もそうは訴えていない。また「インデックス型」でも「リスクを抑えた運用」はできる。「状況やニーズに応じて」安全資産の比率を変えればいい。

先の例で言えば、まずは300万円の個人向け国債と700万円の「インデックス型ファンド」を持ち、「リスクを抑えた運用」にしたくなった時は国債比率を半分にするといった具合だ。「コスト」で負ける「アクティブ型」を保有する合理性はない。

しかし「資金面で余裕が出てからサテライト的にアクティブ型を取り入れるのがよいだろう」と篠田氏は「アクティブ型」に読者を誘導してしまう。そして、なぜ「アクティブ型を取り入れるのがよい」のかは教えてくれない。本音としては「そうでないと業界的に困るから」だろう。

コスト」を考慮しない場合、同じ投資対象(例えば日本株)であれば「アクティブ型」でも「インデックス型」でも期待リターンはほぼ同じだ。なのに「コスト」で負ける「アクティブ型」を選ぶ意味はない。「資金面で余裕」が出たとしても、それは変わらない。

「篠田尚子氏の言うことを信じるな」。投資初心者には改めてそう伝えたい。


※今回取り上げた記事「いまさら聞けない! Q&Aで分かる投資信託

https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210209/se1/00m/020/024000c


※記事の評価はD(問題あり)。篠田尚子氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「アクティブ投信」を薦める楽天証券経済研究所の篠田尚子氏を信じるな!https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/05/blog-post_15.html

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