2021年1月7日木曜日

回答までに半年を要した週刊ダイヤモンドの特集「医者&医学部 最新序列」

週刊ダイヤモンドに問い合わせをしてから約半年。ようやく決着した問題を今回は取り上げたい。編集長が「きちんと問い合わせに答えるように」と指示を出しても、それを守りたがらない部下がいたと見ている。

夕暮れ時の巨瀬川(久留米市)

やり取りは以下の通り。


【ダイヤモンドへの問い合わせ(2020年6月22日)】

教育ジャーナリスト 庄村敦子様  週刊ダイヤモンド編集部 野村聖子様 鈴木洋子様 山出暁子様

6月27日号の特集「医者&医学部 最新序列」についてお尋ねします。問題としたいのは「Prologue~コロナ後は『安定』『高収入』が終焉? 医学部受験の過熱に異変あり」という記事に付けたグラフの解説です。

過去5年間の医学部偏差値の推移」を示したこのグラフを見ると「私立大学平均」のところに「近年受験の過熱や少子化で志願者数が微減も、いまだ早慶理系前後の水準をキープ」との説明が付いています。これを信じれば、私立大医学部の偏差値の「平均」は「早慶理系」とほぼ同水準のはずです。

しかし、これは従来の御誌の説明と大きく食い違うのではありませんか。例えば2017年9月16日号の特集「大学序列」の中の「Part 5~『東大』よりも医学部!エリート街道の変貌」という記事では「どんな私立医学部であれ、最低でも早慶理系学部に軽く受かるレベルでなければ、合格は難しくなっている」と言い切っています。

こちらを信じれば「早慶理系」の偏差値は「私立医学部」の最低クラス以下のはずです。今回問題としたグラフには偏差値に関して「私立大が地味に下降中」という説明も付けています。ただ、17年に比べて1程度の差しかありません。この間に状況が大きく変わった訳ではないでしょう。

なのに「どんな私立医学部であれ、最低でも早慶理系学部に軽く受かるレベルでなければ、合格は難しくなっている」と書かれていた「早慶理系」が、医学部の「私立大学平均」と肩を並べるところまで来ています。

これはどう理解すればいいのでしょうか。個人的には、今回の「いまだ早慶理系前後の水準をキープ」という説明に問題があるのではと推測しています。

お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。特集自体は興味深く読ませていただきました。特に「覆面座談会」は読み応えがありました。


【ダイヤモンドからの返信(6月26日)】

鹿毛 様

6月27日号の特集「医者&医学部 最新序列」についてお問い合わせいただき、ありがとうございます。返信が遅れてしまっていて、大変申し訳御座いません。週明けには返信をさせていだきます。

恐縮ですが、引き続き、宜しくお願いいたします。

週刊ダイヤモンド編集部


【ダイヤモンドへの返信(7月20日)】

週刊ダイヤモンド編集部 担当者様

6月22日にお送りした問い合わせについてお尋ねします。「週明けには返信をさせていだきます」との回答を以前に頂きました。これを信じれば、6月29日ごろには改めての回答があるはずです。しかし、そこから何の返信もありません。既に3週間が経過しています。問い合わせからは約1カ月が過ぎました。

この件はどうなっているのでしょうか。また、常識的には考えられないほど回答に時間がかかっているのはなぜですか。詳しく教えてください。

よろしくお願いします。


【ダイヤモンドからの返信(7月20日)】

鹿毛さま

大変失礼しました。決して無視や放置をしているわけではございません。お伝えした期日に返答せずもうしわけございませんでした。返答が長引いている理由を、まずは回答させてくださいませ。

1点目は、当時担当した者が、個人的な理由により急遽退職してしまっていることがあります。

2点目は、偏差値について調査しようと思ったところ提供会社から「誌面での紹介以外では提供が難しい」「提供は有料になる」と回答され難航している

大きくは上記2点により、とりまとめが遅くなってしまっています。

繰り返しになってしまいますが、無視をして放置して、このままにしておこうとは考えておりません。

なるべく早めに回答いたします。

恐縮でございますが、もうしばらくお待ちいただければ幸いです。

週刊ダイヤモンド編集部


【ダイヤモンドへの問い合わせ(12月27日)】

週刊ダイヤモンド 編集長 山口圭介様 担当者様

1月9日号の特集「創価学会90年目の9大危機」の中の「創価高の難関大合格者激減~“創価エリート教育”の迷走という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。

90年ごろ、非学会員の比率は、創価大学では9割、創価高校ではほぼ10割といわれていた。だが令和の今のそれは、大学で8割程度、高校で9割くらいと、じわりと『非学会員率』が増えつつあるという

この説明には矛盾があります。「非学会員の比率」は「創価大学では「9割」から「8割程度」へ、「創価高校」でも「ほぼ10割」から「9割くらい」へと低下しているはずです。しかし「非学会員率』が増えつつある」と書いています。

常識的には「90年ごろ」に「創価大学では9割、創価高校ではほぼ10割」が「非学会員」だったとは思えません。非学会員の比率」となっているのは「学会員の比率の誤りではありませんか。

追加でもう1つお尋ねします。2020年6月27日号の特集「者&医学部 最新序列」に関する問い合わせを6月22日にお送りしました。回答がないので再び問い合わせたところ「無視をして放置して、このままにしておこうとは考えておりません。なるべく早めに回答いたします。恐縮でございますが、もうしばらくお待ちいただければ幸いですとの連絡を7月20日にいただきました。しかし、そこから5カ月以上が経っても何の回答もありません。最初の問い合わせからは半年以上が経過しています。

5カ月以上も何の連絡もしていないのに「放置していないと言えるでしょうか。百歩譲って、確認作業を毎日のように続けて半年以上が経過したとしましょう。それでも記事の情報が正しいかどうか確認できないのならば、断念してその旨を伝えるべきではありませんか。その上で「正しいと確認できない情報を掲載してしまった」と誌面で読者に伝えるべきでしょう。

長く「放置」が続いた今回の対応についてどう考えていますか。編集長としての見解を教えてください。


【ダイヤモンドの回答(2021年1月5日)】

鹿毛秀彦様

あけましておめでとうございます。平素は弊誌をご愛読いただきありがとうございます。

ダイヤモンド編集部の山口と申します。お問い合わせの件につきましてご連絡差し上げました。

1月9日号の創価学会特集で問い合わせいただきました、「非学会員の比率」との記述は「学会員の比率」の誤りではないかとのご指摘について、以下のとおり回答させていただきます。

鹿毛様のご指摘のとおり、誤った記述となります。1月16日号で訂正を掲載いたします。

理由は単純な確認ミスでした。あってはならない誤りであり、原稿確認及び校正体制を改めて強化していく所存です。

次に医者&医学部特集の件について回答させていただきます。

まず、当方と、担当者及び担当デスクとの意思疎通ができておらず、回答が大幅に遅れてしまった点、お詫び申し上げます。

結論から申し上げますと、昨年6月の医者&医学部特集の「いまだ早慶理系前後の水準をキープ」とする説明については問題はなく、2017年の大学特集の表現が適切ではなかったと考えております。

順を追って説明させていただきます。以下は2017年9月の大学特集内の数値となります。

◆P78、P82の偏差値一覧(ベネッセ)によると、

慶応の理系偏差値(医学部を除く)

理工 71

薬学 71

看護医療 68


早稲田の理系偏差値

基幹理工 70

創造理工 69

先進理工 71


◆P131の主要大学医学部の偏差値推移(ベネッセ)によると、

私大医学部の偏差値 68〜75

慶応と自治の偏差値が際立って高いため、

2校を除いた偏差値は概ね70前後

以上の数字などから、ご指摘にある大学特集内の

「どんな私立医学部であれ、最低でも早慶理系学部に軽く受かるレベルでなければ、合格は難しくなっている」という記述が適切でなかったと認識しております。

表現一つで記事全体のトーンは変わってしまうため、以後、こういった齟齬がないように注意して参ります。

本年も引き続き「週刊ダイヤモンド」をどうぞよろしくお願いいたします。


◇   ◇   ◇


組織がダメになる時に「魚は頭から腐る」とよく言われる。しかし胴体部分から腐ってくる場合もあるのだろう。「担当者及び担当デスク」の中に「何とか回答しないままうやむやにできないか」と考えていた者がいた可能性は極めて高い。

今回は頭が腐っていなかったことが幸いだった。自分は週刊ダイヤモンドの敵ではない。敵か味方かに分ければ明らかな味方だ。厳しいことも言うが、それは良い雑誌にしたいからだ。そのことを改めて記しておきたい。

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