2021年1月10日日曜日

データの扱いが恣意的な日経「チャートは語る~雇用難、非正規・若者に集中」

 データを恣意的に使いたくなる気持ちは分かる。しかし、ご都合主義が過ぎると記事に説得力がなくなってしまう。10日の日本経済新聞朝刊1面に載った「チャートは語る~雇用難、非正規・若者に集中 格差固定化も」という記事では以下のくだりが引っかかった。

大阪市中央公会堂

【日経の記事】

労働市場からの退出者は雇用の実態を捉えるためには見逃せない。その分を加味して失業率を計算し直すと米国は12月の6.7%が9.8%になる。英国は10月の4.9%が5.4%に高まる

足元では世界を感染第3波が襲う。雇用支援は持久戦になる公算が大きく、労働市場からあぶれた人に目配りした対策も求められる。日本総研の山田久副理事長は「介護など人手不足の産業に誘導する政策が必要だ」と指摘する。


◎日本はなぜスルー?

記事には「非労働力人口の増減で補正した失業率」という日米英を比較したグラフが付いていて「実質的な失業率は政府統計よりも高水準に」と説明している。

しかし日本は直近では「非労働力人口の増減で補正した失業率」が「補正前」を下回っている。「政府統計よりも高水準に」が直近で成立しているのは米英だけだ。

日本に何らかの特殊事情があるのならば説明が欲しい。しかし記事では「米国は12月の6.7%が9.8%になる。英国は10月の4.9%が5.4%に高まる」と都合のいい部分だけに触れて日本はスルー。他の国ならばまだ分かるが、肝心の日本に当てはまらないとなるとかなり苦しい。なのに「労働市場からあぶれた人に目配りした対策も求められる」と話を進められても困る。

データの見せ方に関して、もう1つ注文を付けておこう。

【日経の記事】

日米英のほかカナダ、フランス、韓国など比較可能な10カ国の労働力人口は感染拡大当初の4~6月期に4億3933万人と前年比1535万人減った。遡れる14年以降初の減少だった。7~9月期も660万人減。感染が再拡大する10~12月期以降は一段と落ち込んでいる懸念が強い。


◎他の4カ国は?

まず「10カ国」のうち4カ国はどの国か分からないのが辛い。これだとデータが正しいのか検証できない。記事に付けたグラフでは「国際労働機関のデータから作成、2020年第3四半期は9カ国分」という注記がある。ここで10カ国がどこか列挙してもいい。さらに言えば「2020年第3四半期」で抜けている国がどこかも明示すべきだ。

もっと言うと「10カ国」を選んだ基準も示してほしい。「比較可能」な国が世界に「10カ国」しかないという可能性もゼロではないが、ちょっと考えにくい。


※今回取り上げた記事「チャートは語る~雇用難、非正規・若者に集中 格差固定化も

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF0495A0U0A201C2000000


※記事の評価はD(問題あり)

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